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永六輔氏のラジオ 話が飛んでも上手くいく理由を本人明かす

 46年間、1万2629回にわたり続いたラジオ番組の最終回が放送された翌日、何事もなかったかのように、もうひとつの冠番組の生放送に臨んだ永六輔氏(80)。

 伝説的番組『夢であいましょう』でテレビバラエティの雛型を作り、作詞を担当した『上を向いて歩こう』は米ビルボード1位を獲得。著書『大往生』は230万部を売り上げた。それでもいま、ラジオという場所で生きる永氏を、吉田豪(プロインタビュアー)が深掘りインタビュー。

──永さんのラジオいつも聴いてます! 共演するアナウンサーの遠藤泰子さんも外山惠理さんも、本当にいいパートナーですよね。

永:はい。最初にちょっと言い訳をしておきますと、僕のパーキンソン病っていうのは言語不明瞭で、話が途中で飛ぶんですね。それでも遠藤さんも外山君も話が次はどこに飛ぶか見当がついてるから、うまくいくんです。ただ、こういうインタビューでの対応っていうのは、昔はうまかったんですけど、最近はもたもたしてるので、それはすみません。

──いえいえ、本もほとんど買ってますけど、素晴らしいですよ。デビュー作の『一人ぼっちの二人』(1961年)とか、なんでこんなにウンコとオナラの話ばかりなんだろうって(笑)。

永:多かったです、昔は。深夜放送がそういう話ばっかりやってたのと、来る投書がその手のものが多かったので。でも、ずいぶん叱られました。最近はあまりそういうことはないです。べつに上品になったっていうんじゃなくて、元気がなくなったんでしょうね。

──ウンコの話をするには元気が必要だ、と(笑)。でも、いまでもちゃんとラジオも面白いですよ!

永:……そうですか?

──もちろん!

永:だけど、卓球じゃないけど、来たボールをすぐ打ち返せない。それが自分でイライラするんですよね。固有名詞が特に出ないんです。目の前にいる外山君に「君、誰だっけ?」って聞いたときは、すごく叱られて(笑)。それはふざけてるんじゃなくて、言葉がパッと消えちゃうんですよ。

──それに対応する2人の技術に毎回感心してるんです。TBSラジオ『土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界』で永さんが「なんだっけ、は……」って言っただけで、外山さんが「半沢直樹」って察したのはさすがだと思いましたよ(笑)。

永:遠藤泰子のほうがもっとわかりますけど(笑)。

──長年のパートナーですからね。そんな遠藤さんと46年9か月やってきたTBSラジオ『永六輔の誰かとどこかで』も遂に終わってしまったわけですけど(9月27日が最終回)。

永:僕としては、休むっていう、やめるんじゃなくてね。もともとはやめようと思ってたんですけどね。これじゃ自分で言ってることが相手に通じないし、相手の言ってることも理解しにくい。プロのラジオ屋としてはやめるべきだろうなと。

 それで僕が「しゃべってることがわからないとラジオをやってることにならないから、やめようかと思う」って小沢昭一さんに言ったら、「絶対にやめるな。しゃべらなくていい。聴いてる人は、マイクの前でガサガサ音がして『あ、永六輔がいる』っていう、それだけでいい。それがラジオの強さだ」って言ってくれたの。

──ホントその通りです!

永:それで今回、46年やってきた番組はお休みしますけど、『土曜ワイド』のほうにはしがみついてます(笑)。

■永六輔(えい・ろくすけ)1933年、東京・浅草出身。中学時代にNHKラジオ『日曜娯楽版』へ投稿を開始。早稲田大学在学中より本格的に放送の世界に関わる。以後、放送番組の作家、作詞家、語り手、歌手、文筆家として幅広く活躍。2010年、パーキンソン病と前立腺がんであることを公表し、治療とリハビリを続けながら現在も活動を続けている。

※週刊ポスト2013年10月25日号

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