芸能

前田吟 研ぎ澄まされた感性で演じる萩原健一に影響を受けた

 1965年のデビュー以来、テレビドラマに映画にと多くの場面で活躍してきた俳優、前田吟。かつて時代劇で共演した、ミュージシャンから役者に転向したばかりだった萩原健一から受けた影響について、前田が語った内容を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が解説する。

 * * *
 前田吟は時代劇の出演も数多いが、中でも印象的なのは1973年のテレビシリーズ『風の中のあいつ』(TBS)だ。通常の時代劇では「清水の次郎長」の悪役として登場する幕末のヤクザ「黒駒の勝蔵」を主人公に据えた異色作で、前田は萩原健一扮する勝蔵の相棒を演じている。当時の萩原はミュージシャンから役者に転向したばかりだった。

「ショーケン(萩原)との共演は、物凄く勉強になった。彼は我々みたいに計算して役作りするんじゃなくて、研ぎ澄まされた感性で演じるんですよ。

 音楽から来る感性もあるんだろうけど、静かにするところと激しくするところを自分なりに作曲できている。『え、こんなところで怒鳴るの?』という芝居があるんです。我々はト書きに『冷静に』とある時は冷静に演じるし、激する芝居をする時はだんだんと気持ちを高ぶらせる。ところが彼は冷静に演じないし、いきなり怒鳴る。それで怒鳴ったかと思ったら、今度は静かにしたり、わざと笑ったり。

 それ以来、ト書き通りにやったんじゃお客さんはあまり感動しないと思うようになりました。僕は僕なりにコツコツやっていけばいいと思っていたから、どんな良い俳優でもマネしようとは思わなかったけど、彼だけは違った。それで、芝居をだいぶ変えました。相手にセリフを渡すまでは、自分のセリフは自分なりに作曲すればいいんだって。

 山田(洋次)組でも積極的にアドリブを言いましたよ。ショーケンのお陰で、いろんな発想ができるようになったんです」

文■春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか。

※週刊ポスト2013年10月25日号

関連記事

トピックス

民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン