ライフ

みうらじゅんの結婚論「愛じゃない。介護してくれる人を探せ」

独自の結婚論について語るみうらじゅん

“みうらじゅん先生”が思春期の若者に向けて綴った、笑ってためになる性教育本『正しい保健体育』(イースト・プレス)。第2弾の『正しい保健体育II 結婚編』では、夫婦生活、子育て、介護――結婚を機に次々と訪れる諸問題をどう受け止め、すごすべきかをわかりやすく本音で“講義”している。はたして、選ぶべき結婚相手とは? ロンブー淳がテレビ番組でお披露目した元モデル妻や、ドラマ『半沢直樹』の妻・花といった“できた嫁”が理想? 結婚前の迷える独身男たちにみうら先生がレクチャー!

――性や結婚についてリアルに書かれていて、正直これまで学校で学んだ保健体育よりもためになりました。

みうら:オスとメスという人間の性の基本に立ち返って考えれば、この保健体育は正しくなります。人間は結婚や性に関して過剰な期待と過剰な絶望を教えられてきましたので、それを少しでも阻止する本です。

――みうらさんが考える結婚って?

みうら:結婚しても何ひとつ変わりませんよね。そもそも他人に変えてもらおうっていうのが調子いいですよね。とりあえず、生き物は生まれたら死ぬだけのことで、その間をどう楽しく生きるかだけが問題です。いちばんよくないのは、やはり結婚に対する過剰な期待と過剰な絶望だと思うんですよね。

――では、理想の結婚相手とは?

みうら:介護をしてくれそうな人ですね、当然。オスは本能で薄々そう感じてるんだけど、結婚は愛とか言ってごまかしてるんですよね。

――容姿の良さや料理が上手、などではなく?

みうら:容姿はいずれ落ちますし、メシがうまいといってもいずれ飽きて違うメシも食いたくなる。そんなことは特に重要ではない気がするんですよね。みんな本能では初めから気づいてるのに、その五感が働かなくなってる。女性の顔とかファッションとか言動とか、そういうことにごまかされないため、今までの知識を全部捨てて結婚というものをもう一度、じっくり考えてみたんですよ。もともとある保健体育や老後の本を改めて読んでみても、一冊の本であらゆるタイプの人をひと括りにして解説できるわけがないと思いますしね。最良の伴侶を見つけるための本なんて、どこにも正解なんて書いてないでしょ。

――介護してくれそうな人って例えばどういう人ですか?

みうら:昔、“お尻の大きな女性は子だくさん”とよく言いましたが、昔の人の言うことはだいたい正しいと思うんですよね。“若い男は胸を見て、オヤジは尻を見る”と言うし、中年以上の男性は女性に対して“ダイエットは不要”と思う人が多いでしょう。それはヤセ過ぎでは介護ができないと、年齢を経て察知したからだと思います。あとはとてもフツーなんですが、優しい人がいいですよね。

――最近結婚したロンブーの淳さんの奥さんや、ドラマ『半沢直樹』の妻の花といった“できた嫁”が今、もてはやされていますが?

みうら:ホントに“できた嫁”なんて誰も立証できないでしょ。そんな人、いないと思いますよ。美談はまず疑ってかからないと。まぁ、みんな若い時は、女性の飾られたものに目をとめるように情報操作されていると思うんだけど、もう一回、大人になってるつもりでいる自分をも疑えってことですよね。この本に“比較三原則”と書きましたが「親」「他人」「過去の自分」は、比べてはいけないんです。それさえなくせばみんなすぐ幸せになれるのに、その執着は強力です。隣の芝生はよく見えるって話で、問題は自分なんですよ。ちょっと努力して自分から楽しいほうにもっていくことが必要ですよね。全てのことは結局、他人のせいじゃなく、全部自分のせいだもん。

――これから結婚する人への心構えは?

みうら:結婚は他人と住まなきゃいけないからハードル高いですよね。意見なんてそもそも合うわけないですから。“センスが合ってる”とか、足しになりません。他人でしかも性別が違う。年も違う。育ってきた環境も違って、合うほうが気持ち悪いですよ。合ってたとしたら、どっちかが、合わせてくれる気持ちの優しい人だからですね。そういうことをわかって結婚に臨まないとダメなんじゃないですかね。

――最近の若い男性は結婚願望が強く、“さとり世代”といってコスパで物事を考え、婚活をロスタイムと考えてすぐに結婚する人が多いそうです。

みうら:悟りというのですから、仏教的にはいいことですよね、悟るっていうのは全てのことがわかるってことですから。でも本当に悟ってる人なんていないでしょ。やっぱりこの本の対象は、いちばん面倒くさい、“こじらせてる”文化系の男にターゲットを絞りました。体育会系のほうがより動物的ですからスパッとしてますよ。風俗は浮気に入らないとか、ハッキリ言うでしょ。文化系は、そこに愛がなければいけないじゃないかとかぐずぐずしょうもないことを考えて、自分が正当である理論武装をしようとするんですよね。

――そんな文化系男子に伝えたいことは?

みうら:恋愛でも親子関係でも夫婦関係でも何でも、他人に夢を抱くなってことですよね。

【みうらじゅん】
1958年2月1日生まれ。京都府出身。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー後、イラストレーターやエッセイスト、小説家、ミュージシャンなど、ジャンルを超えて活躍している。独自の着眼点からさまざまな流行語も生み出し、「マイブーム」は1997年の日本流行語大賞を受賞。他にも各地域のマスコットキャラクターを「ゆるキャラ」と命名して一大ブームに。仏像マニアとして知られる。著書に映画化もされた『アイデン&ティティ』(角川文庫)、いとうせいこう氏と共著の『見仏記』シリーズなど。

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト