スポーツ

パラリンピック クラス細分化とメダル価値減のジレンマ直面

 7年後、東京にやってくるのはオリンピックだけではない。障害者スポーツの祭典「パラリンピック」も同年に開催される。この大会の意義を深く理解するための様々な背景を解説しよう。

 パラリンピックに、いくつの競技があるかご存じだろうか。昨年のロンドン大会では20競技・503種目が行なわれた。ロンドン五輪は26競技・302種目だ。

 つまり五輪の金メダル数は302個だが、パラリンピックではその1.6倍超の503個が授与される。出場者数は五輪が約1万500人、パラリンピックが約4300人。ロンドン大会では、個人種目に出場したパラリンピアンの46%が表彰台にのぼった。

 相対的にメダルの価値が薄くなってしまうのには、致し方ない面もある。障害者が競技を行なう場合、障害の種類や程度が大きく影響する。そこでクラス分けが必要となってくるからだ。

 パラリンピックの公式サイトによると、男子100メートル走は15クラスに分かれており、各クラスの優勝者に金メダルが授与される。女子100メートル走は14クラス、五輪招致でプレゼンをした佐藤真海選手が参加する女子走り幅跳びは6クラスに分かれている。日本パラリンピック委員会の担当者がいう。

「競技にもよりますが、クラス分けの基準は、大きく視覚障害、知能障害、肢体障害に分かれている。特に肢体障害は細かく分類されます。単純に障害の度合いではなく、当該競技においてその障害がどの程度影響するかを専門家が判断し、クラスを決めるのです」

 その結果、選手層の厚いクラスと、そうでないクラスの差は大きくなる。たとえばロンドン・パラリンピックの女子1500メートル走のT20(知的障害)クラス。総出場選手は6人で、上位3人がメダルを獲得した。

 障害者スポーツを支えるNPO団体「STAND」代表理事で、『ようこそ、障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち』(廣済堂出版)の著者である伊藤数子氏がいう。

「選手間の平等を追求すれば、できるだけクラスを細分化したほうがいい。しかしそうすると競技者が少なく競技が成立しなかったり、メダルの価値が下がってしまう問題がある。オリンピックと同じ年・同じ場所で開催するようになってから、オリンピックと同じようにメダルに価値のある大会にしたいというジレンマと闘うことになりました」

 当然「平等性」と「メダルの価値」のどちらを優先するかという結論は簡単に出せるものではない。クラス分けをめぐる試行錯誤は永遠のテーマといえる。

※週刊ポスト2013年11月8・15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン