ビジネス

日の丸家電回復 パナソニックは「脱テレビ」のリストラ成功

 5年前のリーマン・ショックによる価格暴落や、AV機器のデジタル化に伴う製品のコモディティー(均質)化などにより、巨額赤字を垂れ流し続けた“日の丸家電”。しかし、ここにきて業績が急回復している。

 10月31日に出揃ったパナソニック、ソニー、シャープの2013年9月中間決算。最終損益を見てみると、パナソニックが前年同期6851億円の赤字から一転、1693億円の黒字を確保。ソニーは401億円の赤字から158億円まで赤字幅を圧縮。また、一時経営危機に陥ったシャープも、3875億円の赤字から43億円の赤字まで改善させた。

 3社に復活の兆しが見えている要因は、円安効果に助けられた面があるものの、これまでエレクトロニクス(電機)メーカーの稼ぎ頭だったテレビ事業のリストラを決断したことが大きい。経済誌『月刊BOSS』編集長の関慎夫氏が話す。

「かつて家電の王様といわれた日本のテレビですが、新興国の台頭によって、いまでは各社とも単なるアッセンブル(組み立て)メーカーに過ぎません。『テレビをつくってこそ電機メーカーは一人前』との常識は通用しない時代なのです。そこで、従来型のテレビ生産は大幅に縮小し、利益の見込める4K(高精細)テレビの開発などで再起をかけています」

 確かに4Kテレビは徐々に消費者の認知度は高まっているが、4Kに対応した放送が始まっていないことや本体価格の高額さから、まだ黎明期といえる。とても家電メーカーの屋台骨を支える事業にまでは育っていない。

 そこで、各社はテレビ事業の比率を下げて事業構造自体の変革を迫られてきたわけだ。中間決算でその効果が早くも表れたのがパナソニックである。

「津賀一宏社長はテレビの位置づけを<スマート化した家の“白物家電”の一部>と表現しました。つまり、パナソニックにとってテレビ事業が主役ではなくなったことを意味します。

 その言葉通り、同社はアメリカの電気自動車メーカー(テスラモーターズ)にリチウム・イオン電池を供給したり、住宅向けの太陽光パネルが好調だったりと、企業向けのビジネスに軸足を置いています。

 B2B(企業間取り引き)による最終製品メーカーからの脱却で、次第に消費者から顔が見えにくくなるデメリットはありますが、安定した利益確保のためにはそれも賢明な選択肢といえます」(前出・関氏)

 一方、ソニーやシャープはホームエンタテインメントや情報家電といった部門で今後もテレビ事業は強化していく構えだが、伸びているのはテレビよりもスマホやタブレットといった携帯電話市場。やはり家電の王様はもはやテレビではないのだ。

 いずれにせよ、テレビ依存からの脱却、事業の選択と集中によって家電メーカーは完全復活するのか。信州大学教授で『日の丸家電の命運~パナソニック、ソニー、シャープは再生するか』(小学館101新書)の著書もある真壁昭夫氏はいう。

「今までのように何の変哲もないモノを売っていたら復活は厳しいと思います。最近売れている家電製品は、どれも新しいライフスタイルを提供するものです。ロボット掃除機の『ルンバ』や油を使わない揚げ物調理器の『ノンフライヤー』など。でも、そういう商品は残念ながら日本のメーカーから生まれていません。

 ソニーだって盛田昭夫さんがいた時代は『世界でいちばん新しいものを最初につくる企業になる』というカルチャーがあったはず。ソニーらしく斬新な製品を開発するマインドを取り戻せば、勢いの衰え出したアップルを打ち崩すぐらいのチャンスはあると思います」

 外的要因に左右されず、メイド・イン・ジャパンの家電が売れてこそ、真の復活であることは言うまでもない。

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン