国際情報

A猪木氏「日朝トップ会談の下地作りのため訪朝強行」と識者

 国会開会中の渡航不許可の禁を破り、27回目となる北朝鮮入りを強行したアントニオ猪木参院議員。所属する日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が「一議員の勝手な行動は許されない」と話したほか、与野党議員から批判が噴出。帰国後は何らかの処分は避けられそうにない。

 しかし、懲罰のリスクを犯してまで、なぜ猪木氏は訪朝に踏み切ったのか。その目的について猪木氏と旧知の間柄というコリア・レポート編集長の辺真一氏に聞いた。

 * * *
――猪木氏の訪朝目的は、スポーツ交流のほかに朝鮮総連本部の土地・建物の落札話が絡んでいるなど、さまざまな憶測が飛び交った。

辺:私も最初は安倍首相の密使として訪朝した可能性や、総連本部を落札したモンゴル企業が元横綱朝青龍の遠縁にあたることなどから、猪木氏のパイプ役としての関与を勘繰りましたが、どうやらそうではないみたいです。

――では報道どおり、猪木氏が理事長を務めるNPO法人「スポーツ平和交流協会」の平壌事務所の開設が主な目的だったということか。

辺:猪木氏が立ち上げた同協会は、日朝のスポーツ交流の橋渡しを担う窓口になっています。それが平壌に拠点をつくることで、いずれ拉致問題が解決して国交正常化した場合、猪木氏がスポーツ利権をほぼ独占する形になるのでメリットは大きい。

 ではなぜ、国会のルールを破ってまで今オープンさせる必要があったのか。実は同協会の北朝鮮側のパートナーは昨年11月4日に設立された「国家体育指導委員会」で、その委員長が金正恩の側近である張成沢(チャンソンテク)国防副委員長だからです。つまり、1年遅れとはいえ、猪木氏は北朝鮮との良好な関係をアピールするために11月4日というオープン日にこだわったわけです。

――猪木氏は張氏のほか、北朝鮮でナンバー2の金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長とも面識があるなど太いパイプを持っている。どうしてそこまで北朝鮮から信頼されているのか。

辺:1996年に新日本プロレスの興行を平壌で成功させて、当時の対日責任者だった金容淳(キムヨンスン)とパイプを持ったことから、北朝鮮人脈を築いていきました。その後、韓国の金永三政権が猪木氏の平壌コネクションに目をつけて、南北首脳会談に向けた親書を猪木氏に託すなど、スポーツのみならず政治的なメッセンジャーとしての役割も高く買われることになったのです。

 もちろん北朝鮮側も猪木氏ひとりの力で日朝関係が動くとは考えていないでしょうが、少なくとも彼には本音を吐けるほど信頼しているし、場合によっては日本政府に向けてメッセージを託すこともできる。

――では、いずれ猪木氏が政府の意向を受けた「特使」となる可能性もあるのか。

辺:拉致問題の解決なくして国交正常化なし。これは猪木氏も同じで、拉致問題が進展しなければ自分の夢は実現できません。そのためには、そう遠くない時期に、否が応でも政府のほうから自分の持っている北朝鮮コネクションを頼ってくるはずだと睨んでいるでしょう。今回、例え党員資格の停止などの処分が下ったとしても、彼自身はもっと大局的な見方をしていると思います。

 本人も7月に訪朝して帰国した際に「これからすべてがサプライズ外交で問題が解決する」と思わせぶりな発言をしていますからね。猪木氏のいうサプライズ外交の最終目標は、安倍首相と金正恩のトップ会談です。そのための下地づくり、パイプ役として自分が頼られると考えているのです。

――安倍政権は野党の一議員に拉致問題の仲介役を頼むとは考えにくい。

辺:小泉訪朝からはや11年。このまま拉致問題が膠着したままでは進展すらありませんし、高齢化する被害者家族にとっても「待ったなし」の状況です。しかも、安倍首相は「自分の政権の間に解決させたい」と強い意志を語っている中、野党議員だからと悠長なことは言っていられないでしょう。

 ただ最近、内閣官房参与の飯島勲氏や古屋圭司拉致問題担当相が相次いで拉致問題の早期進展を匂わせています。猪木氏が出るまでもなく安倍首相が平壌に乗り込んで金正恩に直談判する――なんて電撃サプライズ外交がないとも言い切れませんよ。

トピックス

オーナーが出入りしていた店に貼られていた紙
「高級外車に乗り込んで…」岐阜・池田温泉旅館から“夜逃げ”したオーナーが直撃取材に見せた「怒りの表情」 委託していた町の職員も「現在もまだ旅館に入れない」と嘆き
NEWSポストセブン
記者の顔以外の一面を明かしてくれた川中さん
「夢はジャーナリストか政治家」政治スクープをすっぱ抜いた中学生記者・川中だいじさん(14)が出馬した生徒会長選挙で戦った「ものすごいライバル候補」と「人心を掴んだパフォーマンス」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博内の『景福宮』での重大な疑惑が発覚した(時事通信)
《万博店舗スタッフが告発》人気韓国料理店で“すっぱい匂いのチャプチェ”提供か…料理長が書いた「始末書」が存在、運営会社は「食品衛生上の問題はなかった」「異常な臭いはなかった」と反論
NEWSポストセブン
63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志さん
《63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志》不良役演じた『ビー・バップ』『スクール☆ウォーズ』で激変した人生「自分の限界を超える快感を得ちまった」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
サッカー界のレジェンド・釜本邦茂さんが「免許返納」密着取材で語っていた「家族に喜んでもらえることの嬉しさ」「周りの助けの大きさ」
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがニューシングル『Letter』をリリース(写真・左/AFLO、写真・右/Xより)
羽生結弦の元妻のバイオリニスト・末延麻裕子さん、“因縁の8月”にニューシングル発売 羽生にとっては“消せない影”となるのか 
女性セブン
中学生記者・川中だいじさん(14)が明かした”特ダネ”の舞台裏とは──
「期末テストそっちのけ」中学生記者・川中だいじさん(14)が抜いた特ダネスクープの“思わぬ端緒”「斎藤知事ボランティアに“選挙慣れ”した女性が…」《突撃著書サイン時間稼ぎ作戦で玉木氏を直撃取材》
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
メキシコ五輪得点王・釜本邦茂さんが語っていた“点取り虫”になる原点 “勝負に勝たなければならない”の信念は「三国志」に学んでいたと語る
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴行動画に批判殺到の花井組》社長らが書類送検で会社の今後は…元従業員は「解体に向けて準備中」、会長は「解体とは決まっていない。結果が出てくれば、いずれわかる」と回答
NEWSポストセブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン
猫愛に溢れるマルタでは、動物保護団体や市民による抗議活動が続いているという(左・時事通信フォト)
《深夜に猫地面にたたきつける動画》マルタで“猫殺し”容疑で逮捕の慶應卒エリート・オカムラサトシ容疑者の凶行と、マルタ国民の怒号「恥を知れ」「国外に追放せよ」
NEWSポストセブン
大神いずみアナ(右)と馬場典子アナが“長嶋茂雄さんの思い出”を語り合う
大神いずみアナ&馬場典子アナが語る“長嶋茂雄さんの思い出”「こちらが答えて欲しそうなことを察して話してくれる」超一流の受け答え
週刊ポスト