全国の年間消費量が実に10億食ともいわれる「牛丼」は、いまや日本の国民的ファストフード。ところが、知っているようで知らない秘密がまだまだ残されている。そのなかからチェーン店でも存在する“裏注文”について迫った。
大衆食文化に詳しいライターの松浦達也氏によれば、メニューに載っていない注文が可能な店が牛丼チェーンにも存在するという。
「吉野家は1899年に東京・日本橋の魚市場にオープンした店舗が築地に移転し、現在も『築地1号店』として営業しています。ここは社員研修の場にもなっていて、店員のレベルも高い。しかも、他の店舗にはない、さまざまな“裏注文”に応じてくれるため吉野家フリークの聖地になっています」
そこで本誌は吉野家の築地1号店に潜入取材を敢行。ネットで話題になっている裏メニューにどこまで対応してもらえるか試してみた。
店員に牛丼並盛の「つめしろ(冷ましたご飯)」、「ネギだくだくだく(玉ねぎの増量)」、「ギョクの黄身だけ」、「味噌汁お湯割り(薄味の味噌汁)」と告げると、怪訝な顔をされることもなく、すんなりオーダーが通った。
調理場に目をやると、ご飯を平皿に乗せ放置し、穴のあいた専用の計量カップで玉子の黄身だけを取り出している。7分ほど経過したところで、ご飯に肉が盛られた。その上に「だくだくだく」の玉ねぎが乗せられる。登場した牛丼は、肉が見えないほど大量の玉ねぎが乗せられ、まるで「玉ねぎ丼」のようだ。もちろん肉の量も値段もそのままだ。
店員によれば、このほかにも「トロだく(脂身増量)」、「つゆ抜き」、などのオーダーが時々あるという。
「混雑時はお断わりすることもありますが、なるべくお客様のご要望にはお答えしたいと思います」(店員)
吉野家以外の2社も「つゆだく」「つゆ抜き」程度のアレンジは規定の範囲で対応している。また、すき家ではメニューに載っていない「牛丼キング」(肉が並盛の6倍、ご飯は2.5倍)がほとんどの店舗で注文可能だ。
※SAPIO2013年11月号