同筋は「企業の大半が様子見グループで、製造現場でも投資を控えている。中国のグレードを従来の上のランクから、中または下に落として、生産量を減らし、導入する機器も安価なものに入れ替えている」と明らかにする。しかし、中国市場は巨大で、うまくいけば収益は高いとの魅力もあり、「即撤退」という決断は下せないという。
それは中国側も微妙に感じ取っており、「長年付き合ってきた日本企業は重要だ」とばかり、「現場では地方政府を中心に再び日本企業の投資を呼び込む姿勢を強めている」と上海の日系企業代表は期待を込めて語る。
北京の日中外交筋によると、中国側は対日関係打開に向けて、昨年12月に発足した安倍晋三内閣にかなり期待していたという。それは7年前の2006年9月、安倍氏が首相に就任した直後、関係が悪化していた中国を訪問し、中国側との信頼回復に成功したからだ。
だが、安倍氏の一連のタカ派的発言などで、中国側は今年春ごろから再び対日強硬姿勢に戻ったという。同筋は「中国指導部は有効な対応策が見つからず苦慮している。安倍政権が助け船を出せば事態はすぐに動き出す」と指摘する。
このようななかで、習主席が9月、中国の外交政策を決める最高決定機関である党中央外交指導小組(グループ)を開き対日方針の転換を決定したことを契機に、中国側の柔軟な姿勢が目立っている。
今年3月まで外相を務め、尖閣問題をめぐる対日強硬発言で知られる楊潔チ・国務委員(副首相級)も今月5日、北京で中村法道・長崎県知事と会談し、「これから民間交流、地域間交流が非常に大切で、積極的に進めてほしい」と要望。
そのうえで、尖閣問題について「日中間にある課題は対話を通し、よく管理しながら解決に結びつけたい」と述べ、「棚上げ」を前提とした話し合いによる解決という従来の姿勢を強調した。
楊氏は外交問題担当の国務委員で、地方自治体の首長と会談するのは異例。しかし、長崎県は習主席がトップを務めたことがある浙江省と姉妹都市で、習氏が副主席時代、北京で長崎県知事と会談したことがある。同筋は「今回の楊・中村会談も習主席の直接の指示で、それだけ習主席の関係改善への期待が強いことを示している」と明かす。
デッドロック状態の政治を尻目に、経済関係が徐々に動き出しているようだ。