ビジネス

東京エレクトロン「社員は肉食系」と統合相手外資系企業が評する

 エルピーダメモリが会社更生法を申請するなど、国内の半導体産業は弱体化の一途だが、「半導体製造装置」は現在も日本メーカーの存在感が大きい。9月に、東京エレクトロンが米・アプライドマテリアルズとの統合を発表したことは、半導体業界だけでなくすべての日本メーカーで大きな衝撃をもって受け止められた。そんな東京エレクトロンでは、どのような人材教育が行われているのだろうか? ジャーナリストの永井隆氏がリポートする。

 * * *
 統合相手のアプライドの関係者はこう語る。

「東京エレクトロンの人材は肉食系ですね。特に上層部はその傾向が顕著。互いの足を引っ張り合い、時には“倍返し”がある銀行とは性格が違うものの、実力主義ははっきりしています」

 一方で東京エレの若手社員は、「出世は実力主義が大いに関係しますが、人の育成にはカネと時間をかけてくれる日本的な会社だと思います。人事部門も『人材育成は技術育成と同じくらい大事だ』と言っている」と語る。海外18か国で70拠点を持つグローバル企業だけに、弱肉強食の部分と、日本的な部分の両方を持ち合わせているようだ。

 同社の人材育成制度は確かにユニークだ。将来のマネジメント層の候補となる「次世代経営者プログラム」や「次々世代経営者プログラム」、さらに「MOT」を学ぶ制度もある。これはManagement Of Technologyの略で、技術版MBAとも言われる。技術を使ってイノベーションを生み出すための経営管理、戦略立案などを扱う学問だ。

「軽井沢にある研修センターでは、幹部候補生を選抜して教育プログラムを実施しています。研修所の料理は、あの『星野リゾート』が手がけています。そのうまい料理を目当てに『行きたい』という若手も多いんですよ」(同前)

 技術者向けには、2008年に「チャンピオンセミナー」と呼ばれる研修を始めた。高い技術を持つ社員を先生役として、専門外の技術者たちに講義し、全体のレベルアップを図るものだ(現在はセミナーの名称は変わったが、同内容の研修を実施)。

「悩みもある」と語るのは半導体産業新聞編集長の津村明宏氏だ。

「一般に馴染みがない製品を扱っているだけに、優秀な学生をどう集めて採用していくかが課題となっています。そのためにメセナ活動などに力を入れている。例えば、宮城県民会館のネーミングライツを買って『東京エレクトロンホール宮城』としたり、マラソン大会に協賛したりしている。それによって知名度が上がり、だんだん優秀な学生も集まるようになってきたそうです」

 ちなみにネーミングライツは年間5000万円だ。さらに昨年は、内定者を対象に運動会を開催。入社4年目には、グループ各社の社員と一緒に2日間の研修を受ける。自らの専門に偏りがちな技術者らに一体感を持たせる狙いだ。日本的な部分の象徴である。

※SAPIO2013年12月号

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン