ライフ

肝臓移植の患者 待機1番になるため米病院に1億5000万円払う

 命の重さは平等でも、命を救う医療には格差がある。日本では受けられない治療、高額で断念せざるをえない治療はたしかに存在する。カネで命の行方は、どれほど左右されるのか。昨年秋、都内で不動産業を営む50代前半の小泉隆さん(仮名)は、大学病院の医師からこう告げられ、目の前が真っ暗になった。

「奥さまの肝臓がんの進行は早く、我々ではもう手の施しようがありません。もってあと数か月です。残念ですが……」

 小泉さんの妻は評判の美人で、40代後半にはとても見えない女性だった。健康そのものだったのに、突然、がんが発覚。病院経営者にも知人の多い小泉さんは肝臓病の権威がいる大学病院を探し出したが、再検査の結果はまったく救いのないものだった。だが、その医師はこう切り出したという。

「ですが、まだ選択肢がないわけではありません。ウチの病院ではやっていないですが、肝臓移植なら助かるかもしれません」

 とはいえ、肝臓の場合、日本臓器移植ネットワークに登録して「ドナー」、つまり提供者を待っても、手術の順番が回ってくるまでにゆうに1年以上かかる。余命数か月ならば、死を待つのみだ──。

 そこで病院側は、すべての患者に提案するわけではないが、と断わった上で、こう持ちかけた。

「実は、海外で移植を受けるという手があります。ウチの病院ならば、アメリカの病院を紹介できます。相当に費用がかかりますが、小泉さんなら、もしかして可能かもしれません」

 小泉さんはおおよその費用を聞いて、「そんなにかかるのか」と驚いたが、死に行く妻を見捨てるという選択肢はなかったし、会社経営者の小泉さんには払えない金額ではなかった。

 紹介されたのは、アメリカ南部にある総合病院。病院側には、あらかじめデポジット(保証金)として、日本円にしておよそ8000万円を振り込み、妻と共に渡米した。病院に着いた彼らは、併設のホスピタルコンドミニアムという1泊15万円のホテルに滞在し、ドナーが見つかるまで待つように指示された。

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン