高級ホテルのスイート並みの値段だが、実際は2LDK程度の普通のコンドミニアム。それに、ハウスキーパーのギャラは1時間500ドルが相場だった。コーディネーター代、渡航費、滞在費……とにかく、あらゆる費用が高く付いた。
2週間後、病院からドナーが見つかったという連絡が入った。すぐに手術が行なわれ、肝臓移植は無事成功。傷口が癒える頃に退院し、夫婦は帰国した。
アメリカでは毎年100人の肝臓移植待機者が亡くなっている。日本同様、移植を受けられる確率は宝くじに当たるようなものだ。それでも、待機リストの最後尾に並ぶはずだった日本人女性が1番に躍り出たのは、小泉さんが大金を支払ったからだ。
小泉さんはデポジットの他に、「研究費」名目で3000万円を支払っていた。アメリカの病院に払った金額は、日本円にして総額およそ1億5000万円──。
驚くべきエピソードだが、これは海外渡航の臓器移植に長年かかわってきた移植コーディネーターが明かしてくれた実話である。
「あまりに短期間で済んだので、周囲の人は“海外旅行にでも行ってきたのか”と気づかなかったかもしれない。本人たちも自分たちの口からはいわないだろう。でも、実際にそういう日本人が、年に何人かいる」
※週刊ポスト2014年1月1・10日号