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外交専門家「中国の実力行使を断念させるだけの力を持つべき」

 2013年11月、中国は日本の領土上空を含む空域に防空識別圏を設定した。そこには日本の航空会社も飛んでいることから、「万一、中国軍に撃墜されたらと思うと、飛行機に乗るのが怖い」という不安の声も上がるほど。2014年、中国の暴走は止まるのか。外務省時代は「伝説の外交官」と呼ばれ、安倍首相の信頼も厚い外交政策研究所代表の宮家邦彦さんが答える。

 * * *
 私は日中関係を短期的に改善することは難しいだろうと思っています。1972年に国交正常化をしてから冷戦が終わるまでは、日中関係は非常に良好でした。それは中国の力がまだ弱く、ソ連と対抗していた時代だったので、アメリカや日本と仲良くする必要があったからです。しかし、1991年にソ連が崩壊し、その必要性はなくなりました。

 今の“暴走”は、19世紀のアヘン戦争以来の民族の屈辱を晴らすという非常に強力な民族主義的な政策に基づいています。中国はまず南シナ海において、力による現状変更を進めてきました。それが東シナ海にも及び、海域から空域へと着々と自己主張の範囲を広げてきています。防空識別圏の設定もその戦略の一環と考えれば理解しやすい。

 安倍政権の国家安全保障会議の創設や集団的自衛権容認に向けた動きが、中国を刺激するのではないかという声もあります。しかし、日本が中国を刺激しないように宥和(ゆうわ)外交をしても、中国の政策が変わることはないでしょう。

 米中激突の危険性を指摘する人もいますが、中国はアメリカとけんかをするつもりはありません。けんかしても勝てないからです。それゆえアメリカの出方や能力を試しながら、最終的に戦わずして勝つ方法を考えています。

 日本のすべき対応は、まず話し合いによって、中国に国際社会の一員としての役割を果たすよう働きかけること。その一方で、万一中国が力による現状変更を本気で考えてきた場合には、それを断念させるだけの充分な力を持っておく必要はあると思います。

※女性セブン2014年1月23日号

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