昨年、日本を訪れた外国人観光客が初めて1000万人を突破した。「観光立国」を標榜する日本政府は東京オリンピックが開催される2020年に2000万人、2030年には3000万人に増やすことを目標としているが、現状では6000万人近い中国や1200万人を超える韓国の後塵を拝している。
しかし、無形文化遺産となった懐石料理を外国人向けのガイドブックなどで“神格化”して大々的にPRすれば、訪日外国人観光客を大幅に増やせるのではないかと思う。
具体的な方法はこうだ。かつてナポレオンは、苦戦したロシア遠征の際、「戦いに勝って生きて帰れば、マキシムで奢ってやる」と言って兵士を鼓舞したとされるが、それに倣って、たとえば日本に来てお土産を1000ドル(約10万円)以上買ってくれた外国人には、日本政府が公認した懐石料理店に限り飲食代金を1万円補助してあげる、という制度を作るのだ。
そうすれば絶大な効果があるだろう。必要なコストは1000万人の外国人旅行者の1割が申請したとしても100億円にすぎないし、懐石料理店も外国人客を満足させるために、これまで以上に味やサービスの向上に努めるはずだ。
そうやって、まず「懐石=KAISEKI」という名称を世界統一ブランドとして定着させるべきだと思う。
観光庁は「Japan. Endless Discovery.」というキャッチフレーズ・ロゴを使っているが、それよりも「和食の最高峰は懐石だ」という“食の頂上作戦”を世界にアピールしていくほうが、よほど賢明だと私は思う。
※週刊ポスト2014年2月8日号