1月25日、アクリフーズ群馬工場で製造中の冷凍食品に農薬「マラチオン」を混入したとして偽計業務妨害容疑で逮捕された同社の契約社員・阿部利樹容疑者(49才)。犯行に及んだ背景には給与体系への不満があったとみられている。
阿部容疑者が抱いたような契約社員の恨みは決してアクリフーズの問題だけではない。2年前から番組制作会社で契約社員として働く40代の女性・A子さんは言う。
「当初は時給2000円だったのが、今年から日給1万8000円に給与体系が変更されたんです。時給の時だったら、残業代がかさむことを理由に、午後8時になると、仕事が途中でも強制的に退社させられていましたが、今は残業代が発生しないこともあり、労働時間が12時間にも及ぶ時もあります。用事があって帰宅したいと申し出ても“次の契約を見直さないとだね”と上司からパワハラまがいのことを言われてしまうんです」
また、化粧品会社で契約社員として働く30代女性のB美さんも苦しい立場を嘆く。
「1年契約で働いているんですが、前回1人の契約社員が更新してもらえなくて、それからはますます更新してもらえるかが心配で…。その人は体が弱くて、よく風邪で休んでいたんです。だから風邪をひかないように気をつけて、さらに失敗しないように、女性社員に嫌われないように仕事しているから、会社にいる時は地獄みたい。
契約更新時に、最初は3%の減額で、次の年は5%、3年目は据え置きで、直近の更新ではまた5%減額を言われました。悔しいけど、でも“会社の業績も伸びていない”とか言われると、“わかりました”と答えるしかなくて…」
こうした契約社員における労働条件の悪化を改善するため、昨年4月からは改正労働契約法が施行された。これにより、通算5年超となる有期契約を更新した場合、無期契約に転換できる「5年ルール」が追加された。また、「有期契約だから」というだけの理由で、正社員と労働条件に差をつけることが禁じられた。
しかし、この法律だけではこうした事態を改善することはできないと、NPO法人労働相談センター副理事長の須田光照氏は言う。
「“5年ルール”を逃れるために4年11か月で契約を打ち切ったり、雇用期間が5年を超えないように契約を結ぶ会社が出てくることが考えられますから、逆にこれまでだったら働けていたのに更新できなかったという事態が出てくる危険性があります。
それに問題なのは、この法律では無期契約に転換した際、正社員と同じ給与体系にするとまでは定めていないんです。あくまで更新は必要ないというだけで、給与体系は契約社員の時のままということだって充分ありえるんです」
さらに、須田氏は労働条件についても改正法では解決できないと説明する。
「アクリフーズのように能力給を採用している場合、給与や賞与を決める基準にどうしても査定する側の主観が入ってしまいます。異を唱えたくても、それによって更新されないかもしれないという不安がありますから、契約社員は心に不満を溜めながら我慢していかざるをえなくなってしまうんです」
※女性セブン2014年2月13日号