昔の政治家は違ったよ。たとえば田中角栄さんは、昭和49年に私が初めて参議院に立候補した時の首相だった。で、角さんは「いまのままだと1万5000票、足りないよ」って何度も言って、「いつ地元に入る? 俺は車(選挙カー)に乗るよ」って心配してくれたんだ。
けど、私は対立する福田派に属していたから、「自分の力でやります」って応援を断わっていた。そうしたらホントに1万5000票足りなくて負けたんだ。落選が分かった投票日の翌朝、家に帰ってきたら、女房が「総理から電話があった」って。角さんからだ。
「お前のオヤジ(村上のこと)は『自分の力で』って言うから、その言葉を俺も信じた。お前のオヤジというのはそういうオヤジだから、俺のところに来いと言ったって来やせん。だから、困ったことがあったら、奥さん、あんたが来なさい」
女房は感激して泣いていたよ。安倍さんにこれができますか? いまのメダカみたいな小粒政治家じゃ、国民から嫌われて当然だ。
【プロフィール】むらかみ・まさくに/1932年生まれ。1980年に参議院議員初当選。自民党国対委員長、労働大臣、参議院自民党幹事長、議員会長を歴任した。
※週刊ポスト2014年2月21日号