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2014.02.22 07:00  週刊ポスト

釜ヶ崎の施設の子どもたち 姥捨てされた高齢者夫婦を救った

 寒い季節は路上生活者にとっては生きるか死ぬかの日々だ。他にゆくところがなく路上生活する人がいるように、さまざまな事情で保護者とともに暮らせない子どもたちもいる。ベストセラー『がんばらない』で知られる鎌田實医師が、大阪のドヤ街・釜ヶ崎を訪れたときにきいた、施設の子どもが老人を助けた話をつづる。

 * * *
 厳冬の1月、大阪のドヤ街・釜ヶ崎に行ってきた。あいりん地区とも呼ばれる場所。日雇い労働者が仕事を求めて集まる、日本最大の“寄せ場”だ。釜ヶ崎には「こどもの里」という貧困や虐待から子どもを守っている施設がある。

 厳寒のこの季節になると、こどもの里の子どもたちは、ボランティアと一緒に夜回りを開始する。釜ヶ崎には、仕事がなくて日払いの簡易宿泊施設にも泊まれない人々が路上で寝起きをしているので、なんとか凍死者を出さないようにと、子どもたちがおにぎりを片手に配って歩く。温かい汁ものを提供したり、簡易カイロや毛布を配って町を回っているのだ。

 夜回りをしていたボランティアが、80歳くらいの高齢者夫婦が路上で震えているのを発見した。話を聞いてみると、親戚から見捨てられたという。

「釜ヶ崎に行けば家がなくてもなんとかなるだろう」と言われて、釜ヶ崎まで連れてこられ置き去りにされた。持てるだけ持って出てきた荷物の中で、夫婦二人は震えていたそうだ。

 路上生活の経験のない80歳のお年寄りが、この真冬に夜を越すことなど出来るわけがない。本当に危ないところだった。間一髪。すぐにこどもの里に連れ帰り、泊めたという。

 翌日、在宅ケアのプロたちが集まって、この夫婦が入所できる施設を探した。そして、しばらくの間は保護してもらえる施設が見つかったという。とりあえず、高齢者夫婦が凍死しなくてすむ方法が見つかったのだ。

 家族や親戚たちから見捨てられたお年寄りたちが入る養護老人ホームはたくさんあるはずなのに、拒否されるケースが釜ヶ崎だけではなく、全国で横行しているという。

 本来は国と自治体でホーム入所等にかかる費用を半々で負担していたのだが、税源移譲で、市町村の全額負担になった。国が手を引いたのだ。そのため税収が少ない市町村では、養護老人ホームが空いていてもそのままにして、あえて入所させない町もあると聞く。

 一方、生活保護だと、国が4分の3負担するので、市町村負担を軽くするために、養護老人ホームに入れないで、生活保護を受給させてしのぐケースがある。そのほうが市町村の懐が痛まないからだ。

 日本という国は、急激な高齢化が叫ばれて久しい。それなのに現実には具体的な対策はない。抜本的な構造改革をしないと、行き届いた福祉がなくて、とんでもない額の借金ばかりが残る国になってしまう。

※週刊ポスト2014年2月28日号

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