芸能

綿引勝彦『天までとどけ』で共演した子どもたちについて語る

 劇団民芸出身で、ヤクザや刑事など怖い印象の役が多かった俳優の綿引勝彦氏は、1990年代にドラマ『天までとどけ』で大家族の父親役を演じたことで、親しみやすいイメージを獲得した。みんなのお父さんとなった綿引氏が「天までとどけ」で多くの子役たちと共演した思い出について語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一がつづる。

 * * *
 綿引勝彦は1980年代までの強面のイメージから一転、1990年代にはテレビゲーム「ポケットモンスター」のCMやバラエティ番組の出演などで柔和な雰囲気を多く見せるようになっている。大きな転機となったのは1991年にスタートした昼の連続ドラマ『天までとどけ』(TBS)だろう。足かけ十年続いた本作で、綿引はアットホームな大家族の父親役を演じている。

 シリーズ開始時点での夫婦には、上は高校生から下は赤ん坊までの十二人の子供がいる設定だった。そのため、多くの子役たちと共演することになる。

「最初は大変でしたよ。小さな子供たちばかりだったから、本番で僕たちがセリフを言っている間も勝手に喋り出したりしてね。最初は『喋っちゃいけない』って言ってたけど、これも一つの家族の雰囲気だと思って。それで『喋りたいなら気にするな。ほどほどならオッケー』と言うようになっていきました。

『撮影が始まる前に家族の輪を作ろう』というプロデューサーの発案で、南伊豆の下賀茂に三泊の合宿に行ったんです。台本の読み合わせもしましたが、ほとんどはみんなで泳いだりして遊んで。それで非常にいい雰囲気が作れました。

 黙って見ていると、段々と子供の縦関係が出来ていくんですよ。大きいお兄ちゃんやお姉ちゃんが、僕たちが何も言わなくていいくらいに注意するようになっていきました。しかも役名で呼び合うんです。『五郎、そんなことをしたらダメだぞ』って。このプロデューサー、いいことするなあ、と思いましたね。

 僕がこういう役をやったことには周囲は驚いていました。僕自身としても、これで『今までの俺と違う世界ができる』と思えて、本当に嬉しかった。

 毎年八月に撮影していましたが、十年もやっていると子供たちの成長が如実に分かります。立ち振る舞いが大人になって、最後の方は子供たちで芝居を作っていました。ですから、毎年夏に子供たちに会うのが楽しみでした。これも一つのいい出会いだったと思います」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか新刊『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)が発売中。

※週刊ポスト2014年2月28日号

関連記事

トピックス

公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハリー・ポッター役を演じる稲垣吾郎
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演、稲垣吾郎インタビュー「これまでの舞台とは景色が違いました」 
女性セブン
麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
人気格闘技イベント「Breaking Down」に出場した格闘家のキム・ジェフン容疑者(35)が関税法違反などの疑いで逮捕、送検されていた(本人SNSより)
《3.5キロの“金メダル”密輸》全身タトゥーの巨漢…“元ヤクザ格闘家”キムジェフン容疑者の意外な素顔、犯行2か月前には〈娘のために一生懸命生きないと〉投稿も
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン