安倍晋三首相が集団的自衛権の「行使容認」について、憲法解釈の変更を踏み出す構えだ。これは「平和の党」を看板にする連立与党・公明党の支持母体、創価学会が最も警戒していることであり、大きな反発が予想される。
実は、宗教界で安倍離れを起こしているのは創価学会だけではない。ここにきて宗教団体が安倍首相の政治姿勢に反対するメッセージを発信している。とりわけ首相の靖国神社参拝に関しては、多くの宗教団体から批判の声が上がっている。宗教学者の島田裕巳氏が解説する。
「首相や閣僚の靖国神社参拝については、神社界は賛成だが、仏教系、キリスト系、新宗教ともに大半は反対の立場です。仏教系は、戦前、国策で戦争協力させられた経緯があり、二度と戦争に加担しないという観点から靖国参拝に賛同しない。新宗教は戦前の国家神道体制で弾圧を受けたところが多く、かなりの教団が参拝に強く反対している。キリスト教系も同様です」
実際、天台宗や浄土真宗など伝統仏教各派からなる「全日本仏教会」は昨年5月、麻生太郎副総理ら閣僚3人が靖国神社の春季例大祭に参拝したことに抗議し、同8月には改めて、小林正道・理事長(浄土宗)が首相官邸に出向いて安倍首相と閣僚の靖国神社の参拝自粛を求める要望書を提出した。
それだけではない。立正佼成会、崇教真光など約70の新宗教が加盟する「新日本宗教団体連合会」(新宗連)も参拝反対の意見書を提出している。新宗連の生田茂夫・事務局次長が語る。
「新宗連は憲法で定められた信教の自由、政教分離の原則の観点から、首相や閣僚の靖国参拝に反対の立場です。この憲法の2つの規定は、戦前にPL教団など宗教団体が弾圧を受け、国民に多くの犠牲者を出した戦争への反省をもとに定められたもので、守るべきと考えている。そうしたことを踏まえて、当連盟の信教の自由委員会委員長名で『靖国神社の「公式参拝」等に関する意見書』を安倍首相に提出しました」
もちろん、創価学会も首相の靖国参拝には断固反対の立場である。ふだんは対立することの多い学会と他の宗教団体が、こと靖国問題では歩調を合わせている。
ところが、安倍首相は昨年12月に靖国神社を参拝。日本キリスト教協議会が「総理、靖国参拝はおやめなさい」という強いメッセージの議長文書を出すなど、宗教界に失望と反発が広がっている。
※週刊ポスト2014年3月7日号