その結果、1回以上風邪にかかった被験者の割合は、「乳酸菌シロタ株」飲用群では66%に対して、プラセボ飲用群は90%。風邪の平均発症回数も、プラセボ飲用群が2.1回に対し、「乳酸菌シロタ株」飲用群は1.2回と約半分であった。また、血液中の免疫パラメーターに変化は認められなかったものの、細菌やウイルスが体内に入った際に活性化する抗体のひとつで、唾液の中や、気道や腸管の粘液の中へ分泌され、バリアとして重要な役割を果たす「IgA抗体」の濃度が、プラセボ飲用群は低下したのに対し、「乳酸菌シロタ株」飲用群は一定のレベルに維持されるといった、両者群間の差異も具体的に確認できたという。
グリーソン教授はこの結果に対し、「競技集団において、食による免疫賦活の効果に関する科学的根拠は稀有である。しかし、この研究はプロバイオティクス飲料が感染の危険性を減らす可能性があることを示唆している。競技者は、軽い病気であってもトレーニングの障害となりパフォーマンスを弱め競技ができなくなるため、風邪を移されたくないと考えている」とコメントしている。
実は今回の実験が珍しいのは、実験の対象者がアスリートに限られている点。こうしたケースでは、多くの人と同じ条件を満たすように、一般的な人が被験者であることが多い。その一方で、激しいスポーツをする人ほど、カロリーや栄養素の消費量が多い上に、競技結果へのストレスなどからも、免疫機能が低くなる傾向が見られ、「一般の人が1年間に2~3回風邪をひくのに対し、アスリートは5~6回」といったデータもあるという。
“鍛えることには熱心なのに、本当は身体、弱いんじゃないの?”と思うくらい、スポーツ好きだが、よく風邪をひいたり、体調を崩したりする人がいるが、それは運動によって栄養素や抗体が減少することで免疫機能が低下し、ウイルスなどの感染リスクが高まるせい――ということらしい。
これから温かくなり、身体を動かしたくなる季節。普段はあまりスポーツをしない人でも、いつもより活動的になったり、運動習慣を作ろうとする時期でもある。健康のために運動をしたら、その消費したカロリーだけではなく、失った栄養素などの補い方を意識した習慣作りも、丈夫な身体を作るためのポイントのようだ。