スギやヒノキを原因とする春の花粉症は、なぜこれほど患者数が多く、激しいアレルギー症状を起こす人が多いのか。その原因を深川先生はこう分析する。
「一つ目の原因は、スギやヒノキの花粉は、ほかのアレルギー原因物質に比べて、圧倒的に量が多いこと。二つ目は、スギやヒノキの背が高い樹木であること。花粉は非常に軽い粒子ですから、風に乗って一旦上空まで舞い上がった後、ゆっくりと落下し、着地点にあたるのが都市部なのです。
夏の花粉症の原因であるイネ科の植物は高さが1メートル前後で、その花粉の飛散距離はせいぜい100メートルほどですから、河原など、イネ科植物の生えている場所に近づかなければ症状を抑えられます。しかし、上空から大量に降り注ぐスギやヒノキの花粉は、どうしても避けきれません」
スギ花粉の粒子は40ミクロンと、空中に漂う物質の中では比較的大きいため、直接体内に入ってくるわけではない。ところが花粉が目や鼻などの粘膜、つまり水分があるところに着地すると、そこで繁殖しようと、花粉を包む外殻が破れ、中からタンパク質が溶け出し、体内に侵入して、アレルギー反応を引き起こすという。
「アレルギーを抑えるには、抗原――アレルギーの原因物質である花粉を、目や鼻などの粘膜に接触させないことが大原則です。そのためにマスクを活用する人は多いのですが、実はメガネも非常に有効です」(深川先生)
メガネをかけると目に入る花粉の量が減ることは、1980年代から論文で指摘されていた。深川先生がその有効性について実証実験を行なったところ、通常のメガネをかけた場合、花粉の飛入量が約50%にまで低減できることがわかった。
「残り50%の花粉は、主に上から降り注ぐと考えられます。また、通常のメガネではカバーしきれないレンズの左右や下からも侵入する可能性もあります」(深川先生)
レンズの上部やサイドにフードをつけ、一般的なメガネの機能を高めた花粉対策用メガネ「JINS 花粉Cut」を製造・販売するジェイアイエヌ社では、検証実験を行ない「JINS 花粉Cut 実験映像」を公開。花粉カット率は98%にまで上昇し、スギ花粉に比べて約1/10のサイズという微細な黄砂も97%カットされたことが確認されたという。
「マスクをしていても、目がむき出しであれば、目から入った花粉タンパクが鼻涙管という管を通って、鼻やのどなど、別の部位にアレルギー症状を起こすことがあります。また、神経伝達物質の連動によって、目のかゆみが鼻のかゆみ――ムズムズ感を誘発することもあります。ですから、メガネで目をしっかりカバーすることで、鼻やのどの症状がやわらぐ可能性もあると考えられます」(深川先生)