厚さ0.03ミリ台の「ゼロゼロスリー」が2003年に発売され、0.02ミリ台の「ゼロツー」が2009年に市場へ──オカモトのコンドームは、いつも驚嘆と賞賛をもって迎えられてきた。だが、同社の茨城工場に勤務する研究開発や製造、品質保証部門のスタッフたちは、そのつど安堵と満足感に浸っていたわけではない。
「ゼロツーが世に出た瞬間に、『次はもっと薄くて、使用感がより自然に近いコンドームを』という目標が具体化したんです」
こう語るのは、研究開発課の佐々木統・主任研究員だ。佐々木主任研究員のみならず、オカモトのスタッフたち全員が、「オカモト品質」というべきコンセプトを共有している。
コンドームという製品の性格上、避妊と性感染症予防のための安全性は一切妥協しない。しかし一方で、着けていないような使用感ゼロの薄さを求めるお客様に満足してもらえる製品を提供し続ける──こうした創業以来の信念を共有するスタッフたちによって、0.01ミリ台を目指す「オカモトゼロワン開発プロジェクト」はスタートした。佐藤篤史・品質保証課長が、オカモトゼロワン開発の舞台裏を明かす。
「私はゼロゼロスリーの研究開発に携わっていました。当時、0.03ミリでも驚愕の薄さで、その頃は将来自分が0.01ミリの開発に携わるなんて想像もしていませんでした。ゼロゼロスリーから6年かけてゼロツー発売にたどり着けたのは、技術面での革新があったから。これらの蓄積がオカモトゼロワン誕生の大きな礎になっています」
開発にあたって、まずは素材から検討された。天然ゴムラテックスや他の素材も候補として挙がったが、最終的にゼロツーと同じ水系ポリウレタンに決まった。しかし、ゼロツーと全く同じ素材では、さらに0.01ミリ薄くするうえで品質を保つことは難しい。佐々木主任研究員がいう。
「薄さは製造方法の技術革新で追求できますが、強度は原料次第なんです。柔らかさと強さを実現する理想の素材を求めて、原料の最適な配合比を探る日々が約1年続きました」