近年では「ブラック企業」という単語も一般的となり、自民党がブラック企業対策を公約に謳うなど、社会問題化している。従業員の副業を認める会社は非常に少ないが、会社にバイトを認めさせることはできるのだろうか? 冷凍食品農薬混入事件の容疑者の男は契約社員の仕事をしながら、新聞配達のバイトもしていたというが──弁護士の竹下正己氏はこう回答している。
【質問】
ある会社の契約社員です。年収は約200万円ほど。これでは生活できる状況ではありません。それなのに会社はアルバイトを禁止しています。このままでは貯蓄もできず、将来が不安です。こうなると、会社に勤務時間外のバイトを認めてもらいたいのですが、どのような話し合いを持てばよいですか。
【回答】
大抵の会社の就業規則には無断の副業や兼業(二重就職)を禁止する規定がありますが、無条件で禁止ということはないと思います。会社の規則をよく確認してください。そもそも勤務時間外は、労働者が自由に使えるはずであり、会社がその使い方に介入できません。自由な時間は、第一義的には労働者のためにあります。
しかし、労働者がその自由な時間を精神的、肉体的な疲労回復のための適度な休養に用いることが、翌日に誠実な労働を提供する義務を履行するために必要ですし、職場の安全衛生に関する事故防止のためにも大切なことです。
そこで会社としても労働者の自由な時間の利用について、関心をもたざるをえないのです。もし、自由時間だからと副業に力を入れて長時間働けば、疲労が蓄積する一方で、本業の仕事について職務に専念する義務が果たせなくなります。
したがって月給が安くて、副業しなければ生活できないとか、家の中でする内職程度というのであれば別ですが、そうでなければ、就業時間外の他への就業が労務の提供に支障を来たすようなものは問題になります。
とはいえ、年収200万円では生活も楽ではないはずです。翌日の業務に支障が生じない程度の短時間で軽いアルバイトであれば、会社も認めると思います。アルバイトの仕事内容や必要とする事情を説明し、許可を申し出るべきです。黙って働き、ばれたら解雇される可能性も否定できないからです。特に単なる自由時間の利用を超えて、長時間に及んで本業の支障になったり、本業と重複して競合するような場合は危険です。
本業に支障がないと思われるのに許可されない場合には、労働条件についての意見の違いですから、都道府県の労働局長に解決の支援を求めるのがよいでしょう。
※週刊ポスト2014年3月28日号