「じつは、シリコーン素材自体はほぼ透明です。しかし強度や硬度を高めるためにシリコーン以外の成分を混合させるため、最終的には色がついてしまう。そのため、市場にある製品はカラフルな色を加えたものがほとんどです。『透明なシリコーン』とはつまり、シリコーン以外の成分を極力使わないということ。もし実現できれば、ガラスのように美しく、しかも割れないという、インパクトのある製品ができます」
結局、製品化は「ガラスのように透明なシリコーン製グラス」に決定した。
試作の結果、底を厚くした重厚感のあるスタイルを採用することになった。ただし、底部にわずかな塵や空気が入っただけでも強度が低下し透明度も下がる。そのため、非常に高度な製造技術が必要だった。
ようやく製造に目途がついたのは2013年9月。11月の業界向け展示会で初お目見えさせることになった。
「インパクトのある展示方法をチームで考えた結果、数十個の『シュプア』でタワーを作り、美しさと強度を演出することにしました。倒れたら危険ではないかと思っている人に手渡して、シリコーン製であることも知ってもらいました」
この演出が評判を呼び、『シュプア』は発売開始日前から、販売店からのオーダーが殺到。そのほとんどが新規取引先だったという。
「新規開発は新しいお客様への招待状──『シュプア』は、そう教えてくれました」
(文中敬称略)
■取材・構成/中沢雄二
※週刊ポスト2014年4月4・11日号