【1990年代】バブルの到来とともに生まれた吟醸酒ブーム
バブルが頂点を極める頃から、淡麗辛口の酒を冷やして飲む吟醸酒ブームが到来。新潟の「上善如水」や「久保田」が脚光を浴びた。一方、昔ながらの酒造りの手法である山廃で造られた石川の「天狗舞」や「菊姫」が人気を呼んだ。
背景にあったのは級別制度廃止後に向けた動きだった。1990年に「特定名称酒」と「普通酒」を分類する制度が導入され、1992年に級別が廃止されると、かつての「特級」「一級」「二級」に「特撰」「上撰」「佳撰」など、独自の名称を付ける蔵元も現われた。
【2000年代】若い蔵元が造る起死回生の銘酒
ワインや焼酎がもてはやされ、杜氏の高齢化が問題視されるなど、日本酒業界は閉塞感に包まれていた。そんな中、若い世代を中心に「蔵元自らが積極的に酒造りに関わる」という新しい試みが始まった。
山形の「十四代」を筆頭に、福島の「飛露喜」など、若い蔵人が同年代の若者に向けて独自の銘柄を発信。また、「酒は燗で飲むのが粋だ」と売り出した福島の「大七」も評判を呼んだ。一方、純米酒に似た精米歩合75%の「米だけの酒」も人気を集め、多くの蔵元がラインアップに加えた。
【2010年代】スパークリング、にごり酒、磨かない酒
欧米で沸く空前の和食ブームを受け、世界市場を視野に入れたブランディングをする銘柄が登場。その筆頭が山口の「獺祭」(だっさい)や愛知の「醸し人九平次」だ。
一方、ワインや焼酎、ハイボールなどに対抗するため、酸味の効いた酒やスパークリングの銘柄も登場。その先駆け的な存在の「すず音」(宮城)やどぶろくを思わせるにごり酒「生もと(「もと」は酉偏に元)のどぶ」(奈良)、さらには精米歩合80%という昔ながらの日本酒として話題の「紀土」(和歌山)、「亀齢」(広島)など、インパクトのある銘柄が続々と現われている。
※週刊ポスト2014年4月18日号