ビジネス

年間費用300億円 マイナンバーシステムを大前氏が一刀両断

 一人ひとりの国民が生まれてから死ぬまで、国家と関わる全情報を集約した国家データベース、JDB(ジャパニーズデータベース)を構築すべきだと大前研一氏は提案している。ところが、実際につくられようとしている日本のデータベース、マイナンバーシステムは初期費用、維持・管理コストともに莫大な上、おそらく無駄な試みになるだろうと大前氏が一刀両断する。

 * * *
 今、日本ではJDBのコンセプトとは正反対の「マイナンバー制度」が粛々と進行している。

 これは国民一人ひとりに12桁の番号を割り当てて、氏名や住所、生年月日、所得、税金、年金、健康保険などの個人情報を一元的に管理するもので、2015年秋に番号を交付し、2016年1月から利用を開始する予定となっている。

 しかし、かねがね私が口を酸っぱくして指摘しているように、マイナンバー制度は「住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)」をベースにした世界最低・最悪の行政システムだ。というのは、住基ネットはこれまたシステムを市町村単位で作っているため、同じ都道府県内の市町村でもシステムが別々なのである。

 このため、各市町村に設置されている住基事務用コンピューターと都道府県・全国の住基ネットシステムとの橋渡しをするCS(コミュニケーション・サーバー)というコンピューターを市町村ごとに新たに設置しなければならなかった。そのための構築コストが約365億円、年間の維持・管理コストが約130億円かかっているが、住基ネットのデータベースは氏名・性別・住所・生年月日の4情報とその変更履歴を管理するだけ。

 しかも、住基カードは、まだ全国で約764万枚(2013年6月現在)しか発行されていないのである。

 そういうお粗末きわまりない住基ネットシステムをベースにしたら、向こう何十年も使えるようなものはできるわけがない。つまり、住基ネットをベースにするという発想そのものが根本的に間違っているのだ。

 マイナンバーシステムの導入コストについては初期費用が2700億円、運用開始後の維持・管理コストが年間300億円程度と報じられているが、このカネはドブに捨てるも同然だと私は思う。

 こんなバカげたことになったのは、そもそも立案する議員や役所にITのわかる人がほとんどいない上、彼ら提供者の「上から目線」とITゼネコンの談合・山分け論理でシステムが構築されているからである。にもかかわらず、国民は怒りの声を全く上げていない。21世紀のシステムを作るというのに、これほど「おめでたい国」は、世界広しといえども日本だけだろう。

※週刊ポスト2014年4月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン