しかし、この結果を導き出すためには多くの“見込み違い”もあったという。
「実はZ―100の濃度を3段階に分けて、有効性を比較する臨床試験も行ったのですが、なんと高用量のほうが生存率が悪いという結果になってしまったんです。つまり、丸山ワクチンをたくさん使用すると毒になるのではないかと、一時騒然となりました。
でも、よくよく掘り下げてみると、高用量の生存率は従来の放射線治療のみの生存率と同じで、低用量を用いることで子宮頸がんの予後が良くなっているという驚くべき現象であることが分かったのです」(藤原氏)
これら画期的な臨床結果は、昨年ASCO(米国臨床腫瘍学会年次集会)でも報告されたが、残念ながら患者の子宮頸がんの進行度にばらつきがあるなどして、「統計学的には意味のある差とはいえない結果になってしまいました」(藤原氏)という。
今後は効果をよりはっきりさせるため、末期の子宮頸がん患者に限定し、臨床試験の範囲を日本だけでなくアジア各国にまで広げていく方針だ。「丸山ワクチンは免疫賦活剤なので、理論的にはどんながんにも一定の効果があるはず」と期待を込める藤原氏。
「ひとつのがん種の治験をやり直すだけでも5年~7年はかかり、莫大な金もかかる」(医療関係者)ため、広くがん治療の“特効薬”として再び承認を得るのは容易ではない。だが、開発から半世紀の時を経ても、丸山ワクチンが色褪せていないことだけは確かだ。