本は人を創り、人を変え、人を育てる。時間に余裕があるゴールデンウイークに「読む本がまだ決まっていない」というあなたに、フリージャーナリストの佐々木俊尚さんが選りすぐりの3冊を紹介する。
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『二十億光年の孤独』(谷川俊太郎 著、川村和夫 翻訳、W.I.エリオット翻訳/集英社文庫)は書く仕事を目指したキッカケの詩集。作者が21才のときに綴った作品で、すでに60年あまり経過していますが、言葉のひとつひとつが鮮やかできれい。高校時代に買ったものはボロボロになってしまったので、改めて愛蔵版を買いました。もう暗記するぐらい読み込んでいるので、今や自分の血肉となっていますね。
また、ぼくは昔から料理が好きで、最近“家めし”エッセイを出版しましたが、これは『食卓の情景』(池波正太郎/新潮文庫)のような作品を今の時代に再構築できないかという思いから。池波さんの本に登場する料理は、とてもシンプルなのに、どうしても食べたくなる。料理の表現やおいしそうな描写は、結構この本に勉強させてもらいました。
『悲しみの歌』(遠藤周作/新潮文庫)は第二次大戦中、米軍捕虜の生体解剖実験に関与した医師が、その後、町の開業医として生きるのですが、過去の行為をマスコミに追及される話です。
今の時代、なんでも白黒つけたがる人が多いですよね。いったん「悪」と認定されると、ネット言論や報道が寄ってたかって攻め立てる。そういう空気の中で読み返してみると、一体何が正義で何が悪なのか、本当の悪なんて存在しない。みんな弱いだけだという作家のメッセージがしっくりくるというか、胸に迫るものがありますね。
ぼくは膨大な情報量を武器に仕事をしていますが、収集した情報を、どういった視点で読み解くかが大切なんです。
一冊の本というのは、そこに著者の世界観、価値観が込められている。
「あ、こんなふうに世界を読み解く人がいる」と、世の中の見方を知識として蓄積させていくと、自分の中に“軸”ができて、大量の情報にも溺れない。
本は月に30~40冊は買いますが、最初の30ページでダメなら終わり。そこは割り切ってスリリングな本との出合いに常に期待しています。
※女性セブン2014年5月8・15日号