缶詰めと乾き物が駄菓子屋のように並ぶ店で、タカラ焼酎ハイボールを飲む
角打ちの店といえば、たくさんの手作りメニューを用意している店も増えてきたが、こちらのつまみは缶詰と乾き物が主役。
「うちは居酒屋じゃないですから。でも、ちゃんと器に盛ったり、温めたりして食べてもらっているんですけどね。そのかわり、缶詰や乾き物の種類は意識してたくさん揃えています。若い人はコンビーフ缶の開け方を知らなくて、そこからみんなでわいわい始まったり、次回はこれを開けて食べるぞなんて言ってくれる人も多いですし」(維修さん)
つまみ類が駄菓子屋のようにたくさん並んでいるため、酒選びよりも缶詰選びに時間をかける姿がここではあたりまえのことらしい。
「スーツにネクタイ姿なんだけど、色とりどりの缶詰に見入ってるところは、ほんと、昔、駄菓子屋に入りびたってた子ども時代の姿そのまんま。見たことのない缶詰なんか見つけると、うれしくなるしね。そんなところも、この店の魅力だね」(50代、製造業)
昨年の夏、常連客の間から、あるリクエストが集中し、それに答えて置いた酒が人気になっているという。
「缶入りのチューハイへの支持は前からあったんですが、甘くないのが欲しいとの声が高まりまして。そこでタカラ焼酎ハイボールを置いてみたら、これだ、これだ、ってことで」(維修さん)
「彼女の部屋の冷蔵庫に、いつもこれが10本くらい入ってるんです。この味を知ったのは僕のほうが遅いんですが、ここで飲めるのを発見したのは僕が先。自慢です」(35歳、自営業)
そんな若手も含めて、「家にまっすぐ帰ったら怖い顔してると言われまして。だから、ここで適度に仕事で固まった気持ちを解凍することにしてるんです」(50代)、
「ここの気持ちよさを覚えたら、寄らないと帰れません。勤務先と家の中間にあって、文字通り私のコンビニエンス角打ちストアです」(40代、製造業)と、
この晩も集まった藤田酒店ファン。みんな星の数ほどある内神田周辺の飲食店の中で、この店に出会えた幸せを味わっていた。