市場に過当競争が蔓延すれば、そこにまた別の不正がはびこってしまうのだ。産地偽装し、安い魚を高く売りつける悪質業者に対しては、いまのシステムが確実に抑止力になっている。価格が下がった、しかし品質もまた下がった、となれば、消費者にとっても歓迎すべき事態ではないだろう。
仲卸の経営者たちも、自分たちが衰退産業であることは自覚している。バブル期、2億円で取引された仲卸の鑑札は、いまや700万円程度にまで暴落。今の仲卸は半分以上が赤字経営の零細企業で、豊洲への移転が実現した際には、600社ある仲卸業者の半分近くが廃業する見込みだ。
「引っ越しの費用だけでも数千万円はかかる。赤字なのにそんな金は出せない。不透明なことが多く、市場内の動線もメチャクチャなまま計画が進んでしまったよ」(4人の従業員を抱える業者社長)
※週刊ポスト2014年5月9・16日号