日本古来の犬、柴犬は主人に忠実でかしこく、番犬としても最適と信じられている。ところが、柴犬だからといって、それだけで主人に従う賢い犬になるわけではない。主宰するCan! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導する西川文二氏が、柴犬の本当の特性について解説する。
* * *
質問です。飼い主に対する忠誠心が強い犬種は?
柴犬って答えた読者諸兄が多いのでは。世には犬種カタログなるモノが存在しますが、そこにもそんなことが書いてあったりする。
では次の質問。飼い主が首輪に手をかけようとすると噛みついてくる犬種は? 実はここにも柴犬が入るんですな。こんなことは、犬種カタログにゃ出てない。
さらなる質問。飼い主の要求に対してはおやつ次第、人間の子供でたとえるなら「いくらくれんの」的な態度を見せる犬種は? そう、ここにも柴犬が入るんですわな。
なんか変。「触んじゃねえよ」、「条件次第だかんね」、って態度は普通、反抗的ってことになる。忠誠心が強いってのとは真逆。
なんでこうなるの? って、それは犬種カタログに書かれてることが正しくないから。いや、正しくないってのはいい過ぎかも。要は犬種カタログ的なものに書いてあるのは、そうあるのが理想の姿、あるいは、それなりに訓練するとそういう犬になる確率が高い、そんな子作りを一部の愛好家はしてまっせってこと。
残念ながら、どんな風に成長してくかは、環境、育て方次第。生まれながらにして決まってるわけじゃあない。
柴犬の飼い主は、飼い主に忠誠心が強いはず、ってな思い込みがあるんでしょうな。そのため力尽くで何かをしたり、やらせようとしたりする。ほっといても忠誠心が強くなるはずって、家庭犬に必要なトレーニングもしない。
結果、噛みつくようにしてしまう、いうことを聞かないように育ててしまう。
日本女性はおしとやかで控えめ、日本男性はちょんまげ、腹切り、ウタマロ、うんぬんかんぬん……。犬種カタログ的なもんに記されてるのは、そんなんとおんなじ程度。そう考えるこってすな。
※週刊ポスト2014年5月9・16日号