消費増税が実施される一方、時限立法で実施されていた議員と公務員の給料削減を安倍政権が打ち切ったことにより、この4月から国家公務員の給料は平均8%引き上げられた。行政職平均のモデルケースでは月額約2万9000円、ボーナスを含めた年収では約51万円のアップ、国会議員の歳費(給料)は、5月分から月額約26万円アップ、年間421万円もの引き上げになる。
霞が関の中でアベノミクスの恩恵を最も受けているのが外務官僚だ。給料アップに加えて海外赴任の手当まで大幅に増額された。
さる3月28日、国会で「在外公館設置法改正案」が成立した。これは「円安で生活が苦しくなる」という理由で、海外に赴任する大使以下の外務省職員に給料とは別に支給される「在勤基本手当」を大幅に引き上げる内容だ。まさにアベノミクスの恩恵である。
主要国に駐在する大使の本給は4月から年間1791万円へと179万円引き上げられた。加えて毎月100万円単位の手当がつく。
例えば駐中国大使の場合、月額79万円だった在勤基本手当が、この4月から93万円へと一気に14万円もアップした。年額168万円アップである。公使は75万円(月額12万円増)、一番下の書記官クラスでも月額約23万円から29万円へと6万円アップになった。
米国や英国、ロシアなど主要国の大使館も大使、公使クラスの幹部は軒並み手当だけで年間100万円以上の引き上げだ。駐中国大使の給料アップの総額を試算すると、本給と在勤基本手当を合わせて年間347万円に達する。
外交官の海外赴任時の手当には、この他に、在勤基本手当の20%と決められている配偶者手当(中国大使なら月額18万6000円)、子女教育手当(小中学生は1人月額14万4000円が限度)、住居手当(在中国公使は月額約73万円。大使には家賃無料の公邸があるため出ない)などが支給され、年収は国内勤務の約2倍になるとされる。
駐レバノン大使を経験した元外務官僚の天木直人氏が語る。
「在勤基本手当は海外赴任に伴う経費として支給される。日本と欧米諸国の経済格差が大きかった昔は、給料だけでは海外生活を賄えなかったから必要だった。しかし、いまや手当は事実上の給料です。
中には、在外公館では24時間が公務だという理屈で、自宅のテレビの購入費など個人の支出まで在外公館の経費から出す者もいた。そうすれば手当が丸々手元に残る。公用車も基準はベンツ300までだが、『他国の外交官は(グレードが上の)ベンツ500に乗っている。300では日本の恥になる』といわれれば認めざるを得ない。
手当増額を要求するのに一番の口実は相手国のインフレ、次に為替レートです。アベノミクスで円安が進んだいまは絶好のチャンス。外務省はアベノミクス万歳と叫びたいくらいでしょう」
※週刊ポスト2014年5月23日号