「血圧を下げすぎるのにもリスクがある」というこの結果は、最新の調査によって次々に裏付けられている。
アメリカのテネシー大学のグループは2005年から2012年までに65万人の慢性腎不全の人を対象に高血圧治療の効果を検証。血圧が高い人ほど死亡率が高かったのは順当だったが、上が130未満、下が70未満という「低血圧」のグループも同じように死亡率が上がるという現象が見られた。
2006年には、アメリカの医師などを中心とした研究者グループが血圧と死亡原因の関係について、35万人を対象に25年間追跡した、空前のスケールの大規模調査を行なった。
それによると、関係者の予想通り、高血圧による死亡原因の1位は、脳卒中や心血管障害だった。だが、意外だったのは血圧が高くなるにつれ、病気以外の原因で死亡する割合が増えたことだ。
明らかに増加したのは転倒・転落、自動車事故、自殺などだ。同時に、これら事故などによる死亡率は、血圧が低すぎる場合でも上昇する傾向が見られたため研究者らを驚かせた。
高血圧や高脂血症、糖尿病などの予防治療を専門とする医学博士で新潟大学名誉教授の岡田正彦氏が解説する。
「その理由として有力視されているのは、血圧が下がりすぎると、脳への血液量が減少し、めまいや立ちくらみなどを起こしやすくなる。また脳の神経細胞にも十分な酸素や栄養分が送られないため思考・判断能力の低下に繋がるといった、血圧が下がりすぎることによる心身へのダメージです」
※週刊ポスト2014年5月23日号