幸い、金銭解決による新制度の導入については、厚労省が難色を示したため6月に政府がまとめる成長戦略には盛り込まれない公算が大きい。しかし、産業競争力会議のメンバーは1年以内に再検討するよう要求するなど、決して諦めたわけではない。
「そもそも終身雇用を前提とする日本の企業風土と、争い事を好まずアピール下手な国民性を考えれば、訴訟の解決金制度は意味がありません。
そんな基準を定めるくらいなら、解雇予告期間を3か月前に延ばしたり、予告手当の上乗せや有給の買い取りなどの制度を充実させたりしたほうが、よほど労働者も納得して転職先を見つけられると思います」(前出・稲毛さん)
「もはや人材はコストでしかない」――溝上氏の著書『非情の常時リストラ』の中にはこんな一文が出てくるが、画一的な基準で解雇の自由化が行われれば、人の流動化どころか優秀な人材も失いかねない。