百貨店は逆風の時代と言われている。その中で増収増益を記録している丸井グループで、存在感を強めているプライベートブランド「ラクチンシリーズ」がなぜ、売れ続けているのかについて作家の山下柚実氏が報告する。
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5月13日、丸井グループの2014年3月期決算が発表された。売上高は4164億円で前年比2.2%増、営業利益は271億円で同11.8%増。増収増益だ。中でも目を惹くのがプライベートブランド(自主企画商品・以下PB)の存在感である。
「新PBの売上高は前期の1.8倍と高伸長いたしました」(決算短信より)
丸井といえばまず、「駅のそば」というキャッチフレーズが浮かぶ。しかし、それだけではない、独特な個性を放ってきた。1階が化粧品売り場一色でなく、デパ地下食品街もほとんどない……他のデパートには見られない店づくり。言ってみれば「ファッション・アパレル」にアイデンティティを置き、他と差別化してきた百貨店だ。
歴史を振り返ると1980年代、若者たちが「カラスのような黒い服」を求めて大行列を作った、「DCブランドブーム」の発信地でもあった。
ファッションの本質とは何か。それは、襞一本にもこだわる微細な感性と、モード。常に変化していくこと、そしてコーディネート力だ。丸井の持つそうした遺伝子を最大限活用したPB『ラクチンシリーズ』のスタートは2010年。パンプスを皮切りに、バッグ、パンツ、スーツ、メンズシューズなど約50アイテムにまで拡大してきた。
先駆けとなった『ラクチンきれいパンプス』は発売4年でなんと累計100万足を突破。シリーズ全体の売上高も2012年度の69億円から2013年度は122億円になった。
丸井が取り組むPB『ラクチンシリーズ』とはどんな商品なのか? 特徴はどこにあるのか? 成功した要因とは何なのか?
「私はシューズ売り場でお客さまと直接やりとりしながら販売する仕事をしてきました」と同社シューズ課バイヤーの五井美希さん(30)は口を開いた。
「でも売り上げはなかなか思うように伸びず、お客さまが本当に求めている靴とは何なのか、日々悩んでいたんです。当時、靴の仕入れは基本的にトレンドの色、デザインを軸にしながらバイヤーが決めていました」
転機は5年ほど前。現状を打破しようと、1500名の大規模ウェブアンケートを実施することに。
「お客さまの回答に驚かされました。なんと9割もの方が『パンプスの履き心地に不満がある』と答えたのです」