国内

規制改革で特に抵抗強いのは厚労省と国交省 官邸サイド脅す

 政権発足以来スローガンとして掲げてきた規制改革に安倍晋三政権が前進しはじめた。混合診療の拡大、農協の組織改革、法人実効税率の引き下げなどが盛り込まれた成長戦略が6月24日に閣議決定された。『日本人を縛りつける役人の掟』(小学館刊)をこのたび上梓した政策工房社長・原英史氏と、東京新聞論説副主幹で規制改革会議委員の長谷川幸洋氏が改革をめぐる攻防の内幕を話し合った。

長谷川:僕の目から見ると、とくに抵抗が強いのは厚生労働省と国土交通省です。昨年、薬のインターネット販売(*注)自由化が取り沙汰された際には、『完全自由化したら大変なことが起こる』という趣旨の有識者会議のペーパーを土壇場に厚労官僚がこしらえて、官邸サイドへの脅し文句に使いました。

 そのペーパーに関していえばオープンなものでも、きちんと議論されたものでもない。追いつめられた官僚たちが“御用”の専門家に深夜、電話をかけ『こういうことでよろしいですね』といってまとめたものに過ぎません。

【*注】昨年6月、安倍首相は「すべての一般医薬品の販売を解禁」と明言。が、その結果生まれた改正薬事法では、大衆薬の99.8%は解禁したものの、0.2%は要指導医薬品としてネット販売を引き続き禁止することに。要指導医薬品は薬局での販売も規制強化され、本人が自ら購入しなければならいことになった。

原:薬がネットで購入できないことで、家の近くに薬局がない人や忙しくて店舗にいけない人は不便を強いられます。足が悪いお年寄りなど、薬局に出向くのが大変な人だって大勢います。

 そもそも海外では薬のネット販売は当たり前なのに、なぜ日本ではダメなのか。役人は、「対面」でならば顔色を見ながら適切な薬を選び、副作用などの注意事項もきちんと伝えられると言います。しかし、従来は家族が代わりに薬局で「対面」して購入することは認められていたのですから、もともと論理破綻していたのです。

長谷川:副作用など、店頭で説明を聞き損なうよりネットで確認した方が確実ですよ。

原:規制改革が進まないのは、既得権者と彼らに支援された政治家、そして天下りなどを通じて既得権者と密接につながった役人が「鉄のトライアングル」をつくるからです。

 薬事法の問題でいえば、日本薬剤師連盟からの多大な政治献金によって、政治家は陳情を無下にできなくなるという背景があります。また、政と業をつなぐ政治献金のほか、官と業をつなぐ天下りもあります。ごく一握りの既得権者を守るために規制が作られ、一般国民の利益が損なわれているのが日本の現状です。

関連キーワード

トピックス

「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
グラドルデビューした渡部ほのさん
【瀬戸環奈と同じサイズ】新人グラドル・渡部ほのが明かすデビュー秘話「承認欲求が強すぎて皆に見られたい」「超英才教育を受けるも音大3か月で中退」
NEWSポストセブン
2人は互いの楽曲や演技に刺激をもらっている
羽生結弦、Mrs. GREEN APPLE大森元貴との深い共鳴 絶対王者に刺さった“孤独に寄り添う歌詞” 互いに楽曲や演技で刺激を受け合う関係に
女性セブン
無名の新人候補ながら、東京選挙区で当選を果たしたさや氏(写真撮影:小川裕夫)
参政党、躍進の原動力は「日本人ファースト」だけじゃなかった 都知事選の石丸旋風と”無名”から当選果たしたさや氏の共通点
NEWSポストセブン
セ界を独走する藤川阪神だが…
《セの貯金は独占状態》藤川阪神「セ独走」でも“日本一”はまだ楽観できない 江本孟紀氏、藤田平氏、広澤克実氏の大物OBが指摘する不安要素
週刊ポスト
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン