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所有ではなく自然の恵みを分け合う 企業と自治体の取組み

南アルプスの主峰・北岳 撮影:広瀬和弘

 この夏休みに海外旅行に出かける人の推計は263万人(JTB調べ)。普段は水道水を飲む人でも、海外では水を買う――というよりも「買わなければ、飲めない」地域が多い。むしろ「水道水がそのまま飲める国」は、世界的に見て圧倒的に少なく、日本を含めてたった十数か国といわれている。水の存在を通して見ると、日本はとても豊かな自然に恵まれた、質の高い水源を持つ希少な国であることがわかる。

 そんな日本の水源のひとつ、南アルプス――その「力」や「魅力」について、『サントリー天然水』の担当者・川村崇さんに話を聞いた。

「まず南アルプスというのは、長野県・山梨県・静岡県にまたがって連なる山脈で、東は富士川、西は天竜川に挟まれたエリアになります。3000m級の高峰がいくつもある国内有数の山岳地帯であり、1964年には国立公園にも指定された自然豊かな場所です。

 海外の水源――例えばフランスと南アルプスを比較してみると、まず地質が異なります。ヨーロッパは海底が陸地となった水成岩、海底に沈殿した砂や泥・微生物の屍骸などが堆積し、圧力で岩石となったミネラル分豊かな硬水ができる土壌です。一方、日本は火山のマグマが地中や地上で冷え固まった火成岩で、飲みやすい軟水というのが特徴。どちらが優れているということではなく、それぞれの土地に、それぞれの特徴を持つ水があるというのは、水が自然の恵みであると、改めて感じるポイントだと思います」

 サントリーというと「水と生きる」をコーポレートメッセージに、「100年先の水をつくる」といった自然保護や水源の保全活動に力を入れている企業として知られている。

「私どもでは、ワイン・ウィスキー・ビールといった酒類をはじめ、天然水や清涼飲料水など、水を扱うビジネスの中で天然水原料にこだわった商品を展開しています。水資源は無限ではありませんから、これは事業継続に関わる大きなテーマです。また、水や水源を育む自然は、我々だけのものではありません。少なくとも私たちが使う分を貯えられるようにするため、森の涵養(かんよう)活動を2003年からスタートしました。

 その活動当初の目標である、“自分たちが使う分の水を賄う環境を作る”というのは、2011年に達成できるようになり、現在は“自分たちが使う分の、2倍の水を育む環境を作る”という新たな目標に向けて活動しています」(川村さん)

 同社では水を作る活動と並行して、原料以外に製造工程で使われる、洗浄水や冷却水などを効率的かつ安全にリユースする、節水効率の高い製造ラインを実現している。しかし、自社で使用する分の2倍の水を生み出す環境を作るとすれば、その用地確保だけでも容易ではない。

「あまり知られていない部分かもしれませんが、私たちは水源や周辺の土地を保有しているわけではありません。全国で現在、17の自治体から水源涵養のために木や森・山などの管理を代行する形で、土地をお借りしているんです。地域のご要望によって期間や契約の形はさまざまですが、丹沢や赤城など最長100年といった長期の契約もあります。

 企業によっては土地を所有し、伐採した木を販売するなど、保全活動とビジネスを両立されている会社もありますが、当社は森を守る活動そのもので収益を上げることはしません。これらはあくまで相互理解のもと、自然の恵みを地域のみなさんに共有いただく――といった姿勢で活動しています」(川村さん)

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