建設ラッシュの中国で、事故をどう防ぐかは喫緊の課題。安全を促す標語、看板の類にも趣向は凝らされているようで…。拓殖大学教授の富坂聰氏が報告する。
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日本の街を歩いていて工事現場の前などを通りかかると、必ず目に入るのが、「安全第一」などと書かれた標語のプレートである。この事情は中国も同じだ。工事現場だけでなく街の至る所にそれは見つかる。
ただ、かつての中国では乱暴な運転をして乗客を振り落すバスに「為人民服務」などと書かれていて皮肉でしかなかった。だが、それもいまでは大きく変わっているという。
「非正規の労働者が多く、労災などといった意識も低かったかつての労働現場とは違い、いまでは中国も現場の安全には非常に気を使うようになっています。大きな事故が起きれば政治問題になって現地の書記が駆けつけてくる時代ですからね」(地方政府関係者)
というわけで、いま建設現場などでは安全を呼び掛ける標語が花盛りとなっているのだが、基本的に何を書くかは現場に任されている。
そうしたなかネットを中心に中国全土に広がった一つの標識の登場が大きなニュースとなった。
広東省党委員会の機関紙『広州日報』がウェブで伝えた情報によれば、場所は東城主山社区の工事現場である。そこに立てかけられていた看板には、こんな言葉が並んでいた。
〈同僚のみなさん、外での仕事では安全に注意しましょう。もし事故でも起きれば、他人があなたの妻と一緒にベットに入り、あなたの子供を叩くでしょう。そしてあなたが稼いだ金を浪費し、両親を虐待するでしょう。安全に働くことは、あなた自身のためです〉
注意喚起が目的とはいえ、ちょっと過激すぎる内容だ、
ネット情報をもとに記者が現場に駆けつけると、看板はもうすでに撤去された後であった。代わりに現場におかれていたのは、
〈もし事故でも起きれば、父母の面倒を見てくれる人はいなくなります。妻の世話もできなくなります。子供を教育することもできなくなります〉
だった。
なんとなく前作者の意図は継承されているのだろうか。