もうひとつ解せないのは、笹井氏はそこまで追い詰められていたにもかかわらず、なぜ小保方氏にエールを送ったのかという点だ。別の理研関係者は首を傾げる。
「小保方さんが体調不良を訴えているため、STAP細胞の検証実験に本格的にとりかかれるのは9月頃といわれていますが、理研の関係者の間では、この検証実験は『成果がないことを確認するための作業にすぎない』というのが共通認識になっている。
そんな絶望的な状況をわかっている笹井さんが『STAP細胞を再現してください』と彼女に伝えたのはなぜなのか。本当に再現できると信じていたなら、自殺を図ったことと矛盾する。
笹井さんは責任感が強く、部下に責任を押しつけたりしない人ですが、冷静に読めば遺書のエールは最大級の『嫌味』とも取れる。笹井さんは小保方さんの杜撰な研究に裏切られた立場でもある。しかし騒動後、小保方さんは自分ひとり弁護士を立てて身を守ろうとした。笹井さんも内心は穏やかでなかったはずです」
「スマートな天才研究者」のまま逝った笹井氏に、その真意を訊ねることはできない。
※週刊ポスト2014年8月29日号