大脇監督に西嶋投手の「投手としての美質」を訊ねると、「うん」と頷いて、「絶対に打たれまいという強い気持ちと」続けた言葉に、私は全てを了解した。
「野球を始めたばかりの子どものころに持ったであろう、『野球は楽しい』という気持ちを今だに失っていないことです」
だから遊び半分で投げた超スローカーブを、毎日必死に練習して甲子園に持って来られたのだ。青い空と白い雲を背景に舞い上がった白球は、打者を幻惑し、ファンを魅了し、味方を鼓舞し、そしていま野球を始めたばかりの少年たちに「甲子園は楽しい」と伝えてくれたのだ。