スポーツ

空に舞い落ちる超スローカーブ 「野球は楽しい」が源だった

 球速はおよそ50キロちょっとという。南北海道代表・東海大四のエース西嶋亮太投手のスローカーブは話題を呼んだ。あの球の「意味」を、フリーライターの神田憲行氏が取材した。

 * * *
 2回戦で敗れたとはいえ、東海大四の西嶋亮太投手の投球は長くファンの記憶に刻まれるに違いない。初戦の九州国際大付属校戦で披露した超スローカーブは、良くも悪くも話題を呼んだ。スポーツ紙の報道によると、学校に「相手を侮辱しているのではないか」という電話まであったそうだ。しかし“渦中”の西嶋投手は気にしていなかった。日下部憲和部長は、

「とくに西嶋になにもアドバイスしていません。話題になったときに本人に『お前なんか気にしてるか』と聞いたら、『いいえ』って言ってましたから」

 大脇英徳監督も「いろいろ言われて気にするタイプなら、最初からあんな球投げてませんよ」と笑う。

 雑音をシャットアウトできたのは、超スローカーブが相手を侮辱した球ではないことを、なにより本人が知っていたからだ。西嶋投手がこの球を練習し始めたのは昨秋から。

「球種が少なくてピッチングが単調になりがちだったので、緩急をつけるために最初は遊びで投げてみたんです。それが意外といけるんじゃないかと思い、ちゃんと投げられるようになるまで毎日1時間くらい練習しました。僕が持っている球種の中でいちばん、投げるのが難しい球です」

 たしかにあの球をよく見てみればわかるが、投げられた球は高く弧を描いたあと座った捕手の元に正確に落ちている。たんなる思いつきだけで投げられるわけがない。ましてや相手を侮辱するために毎日1時間も練習するわけがない。ちなみにメディアによっては「超スローボール」と形容するが、「いえ、カーブの握りで(カーブを投げるときのように)抜いて投げているので、超スローカーブです」と訂正するところからも、この球に賭ける本人の誇りが感じられる。身長168センチ、体重59キロしかない小柄な投手が智恵と工夫と努力で、磨きに磨いてきた一球なのだ。

 ライトを守る高田渉主将は、外野からもよくわかるぐらい高く上がる超スローカーブが出ると、

「ああ、あいつ今日もテンポ良く投げているんだなあとわかります」

 と笑みを漏らした。

 それにしても私にはわからない点がひとつある。西嶋投手はコントロールは確かに非凡なものがあるが、ストレートの球速は通常で130キロ台中盤、スライダー、スローカーブ、チェンジアップも失礼ながら目を見張るほどのキレがあるわけでもない。前述したように身体も小さいから威圧感があるわけでもない。それが延長戦を含む2試合19イニングで自責点1、奪三振20という素晴らしい記録をなぜ残せたのか。

トピックス

6月6日から公開されている映画『国宝』(インスタグラムより)
【吉沢亮の演技が絶賛】歌舞伎映画『国宝』はなぜ東宝の配給なのか 松竹は「回答する立場にはございません」としつつ、「盛況となりますよう期待しております」と異例の回答
NEWSポストセブン
さいたま市大宮区のマンション内で人骨が見つかった
《さいたま市頭蓋骨殺人》「マンションに警官や鑑識が出入りして…」頭蓋骨7年間保管の齋藤純容疑者の自宅で起きた“ある異変”「遺体を捨てたゴミ捨て場はすごく目立つ場所」
NEWSポストセブン
大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン