涙には癒しの効果があるという…。切ないエピソードに触れて、心のデトックスをしてみては? 46才の女性が、娘との体験談を語ります。
* * *
私がお酒に溺れるようになったのは娘が生まれてからでした。夜泣きが激しい娘に夫が怒るので、毎晩ひとりで近くの河原に行って、あやしていました。数時間おきの授乳で睡眠時間が少ないなか、夫は家事や育児を手伝うどころか、私のふがいなさを責めるばかり。つらい日々から逃げるように、お酒に走ってしまいました。
10年ほど経った頃、幻聴や幻覚が起こるようになりました。母に「育て方を間違えた」と泣かれても、夫や娘にとめられても、お酒をやめることはできませんでした。
ある時、家にお酒がなくなったので、買いに行こうとすると娘が財布を取り上げました。私は、思わず近くにあった包丁を娘に向け、「返せ!」と怒鳴っていました。娘は信じられないという顔で私を見ていました。財布を取り返した私は、すぐにお酒を買いに行き、飲んでひと息つくと、なんてことをしたのだろうと後悔しました。
夫に離婚届を突きつけられたのはその翌日のことです。夫の隣にいた娘は目に涙をいっぱいに浮かべて私にひと言、「私の好きだったお母さんはもう死んじゃったから」と。何も言い返せませんでした。私は離婚届に判を押し、すぐに専門病院に入院。自助グループに通うことに。
お酒を飲みたくなると決まって脳裏をよぎるのは、あの時の娘の言葉です。母親に包丁を突きつけられた娘の絶望は計り知れないほど大きなものだったでしょう。
断酒3年目に娘に会うことが許されました。私はただ黙っているだけの娘に何度も頭を下げました。涙がとめどなくあふれてきて、なんという言葉で謝ったのかも覚えていません。でも、そんな私に娘は「お母さん、生まれ変われたんだね」と笑ってくれました。包丁まで向けた私を許してくれたのです。
抱きしめた娘の体はいつのまにか大きくなっていて、どうしてこの子の成長を見守ることができなかったのだろうと、改めて後悔しました。断酒をして8年、もう二度と娘を裏切りません。
※女性セブン2014年9月11日号