ビジネス

バイクで東南アジアの市場に挑戦する渋谷のベンチャー企業

 かつてソニーや松下電器が耕した”日の丸製造業”の地盤沈下が叫ばれて久しい。ベンチャーといえば、ITやゲーム会社が連想される現在、製造業で世界にイノベーションを起こそうという異端経営者がいる。電動バイクメーカー「テラモーターズ」、徳重徹社長。居を構える渋谷の雑居ビルにノンフィクションライター・稲泉連氏が訪ねた。

 * * *
 電動バイクを製造するテラモーターズは、2010年に社長の徳重徹氏が興したベンチャー企業だ。社員数15名。渋谷の雑居ビル内にある小さな貸オフィスに本社を置き、社員の半数以上が月の大半を海外特に注力する東南アジア地域で仕事をしている。

 同社の社員の顔ぶれを見てまず興味深いのは、海外事業の担当メンバーの多くが20代であることだ。例えば、ベトナム支社を任されているのは早稲田大学卒の27歳、フィリピンに単身で駐在するのは慶應大学から新卒で同社に来た24歳の「新人」である。

 創業以来、「電動バイク売上世界一」「日本発のメガベンチャーを作る」と一貫して語り続ける徳重は、「面白いビジョンと世界を変えようとするワクワクしたものが会社にあれば、優秀な若い奴は必ず来ますよ」と語る。

「そんな彼らが自分の力で海外での事業を立ち上げ、成長しながら売り上げを自ら考えて作っていく。それが大手メーカーにはないベンチャーの強味になる。あのソニーだって60年代に20代の若者がアメリカに行って、トランジスタを売るところから始まった。それを今の時代に再現したい」

 テラモーターズの製品はあくまでも耐久性を重視し、機能やデザインなどについては「捨てるところは捨てる」ことでコストを安くした東南アジア向けのものだ。それを武器に同社が狙う二輪・三輪バイク市場は、日本市場が年3000台程度の規模であるのに対し、ベトナムは300万台、フィリピン100万台、インドネシア700万台、インドでは1300万台という大きさだという。

 現在はホンダ、スズキ、ヤマハがシェアの多くを占めているが、各国は排ガスによる環境問題を一様に抱えており、クリーンで安価な電動バイクへのニーズが高まっている。

「注目すべきは各国の一か月の給与に占める燃料代の割合です。ガソリン代が高騰する中で、東南アジアの国々では2割、3割が燃料費となっている。日本にいるとそこまで実感しませんが、向こうでの電動バイクへの潜在的なニーズは相当に高いものがあるはずです。

 にもかかわらず、既存の大手企業はガソリンエンジンをメインに事業を展開してきた歴史があるので、EV(電動モーター)の開発のために人もお金もすぐには割けない。そこを僕らがやる」

 その時代の流れに乗ることで、テラモーターズは新たな市場をこじ開けようとしているわけだ。

※SAPIO2014年10月号

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ハワイ別荘・泥沼訴訟を深堀り》大谷翔平が真美子さんと娘をめぐって“許せなかった一線”…原告の日本人女性は「(大谷サイドが)不法に妨害した」と主張
NEWSポストセブン
世界的な人気を誇るシンガー・d4vd(20)(Instagramより)
「行方不明の10代少女のバラバラ遺体が袋詰めに」世界的人気歌手・d4vdが所有する高級車のトランクに遺棄《お揃いのタトゥー「 Shhh…」で発覚した2人の共通点》
NEWSポストセブン
須藤被告(左)と野崎さん(右)
《紀州のドン・ファンの遺言書》元妻が「約6億5000万円ゲット」の可能性…「ゴム手袋をつけて初夜」法廷で主張されていた野崎さんとの“異様な関係性”
NEWSポストセブン
神田正輝の卒業までに中丸の復帰は間に合うのか(右・Instagramより)
《神田正輝の番組卒業から1年》中丸雄一、『旅サラダ』降板発表前に見せた“不義理”に現場スタッフがおぼえた違和感
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)の“過激バスツアー”に批判殺到 大学フェミニスト協会は「企画に参加し、支持する全員に反対」
NEWSポストセブン
ラーメン店の厨房は暑い(イメージ)
《「汗を落とすな」「清潔感がない」》猛暑で増えた「汗クレーム」 熱湯で麺を茹で上げるラーメン店やエアコンが使えないエアコン取り付け工事にも
NEWSポストセブン
主人公・のぶ(今井美桜)の幼馴染・小川うさ子役を演じた志田彩良(写真提供/NHK)
【『あんぱん』秘話インタビュー】のぶの親友うさ子を演じた志田彩良が明かすヒロインオーディション「落ちた悔しさから泣いたのは初めて」
週刊ポスト
寮内の暴力事案は裁判沙汰に
《いまだ続く広陵野球部の暴力問題》加害生徒が被害生徒の保護者を名誉毀損で訴えた背景 同校は「対岸の火事」のような反応
週刊ポスト
どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン