「日中国交正常化が日本に有利な形で行なわれ、最近まで中国が防空識別圏を設定しなかったのも、日本に経済力で圧倒されていると中国が認識していたからだ。それが、中国の経済規模が日本の2倍弱に達した昨年11月、中国は防空識別圏を東シナ海に設定し、航空自衛隊機に対してスクランブルをかけて威嚇するようになった」
世界が日本を見る目も変わった。ドイツのメルケル首相が就任以来2度しか来日していないのに対して中国には7度も訪れているように、欧米先進国、アジアや中南米、さらに中東やアフリカの諸国も中国重視の戦略を取っている。経済規模が中国の半分以下に成り下がった日本は相手にされなくなっていくのだろう。
「通貨の実力を示す購買力平価を用いて換算した場合、日中のGDP逆転は2002年で、今や中国は日本の3倍。それが表面化しなかったのは円高のおかげだった。ところが安倍政権が意図的に劇的な勢いで円安を引き起こしたため、日中経済の決定的な実力差が明らかになってしまった」(田代氏)
国家経済全体を「購買力」で比較すれば、日本は中国の3分の1しかない現実を直視すべきなのだ。“経済はイマイチだが、外交の強い姿勢は評価できる”という大半の安倍支持者の考えは間違っていることになる。安倍氏は国民生活をズタズタにし、しかも中国や周辺諸国に“日本は恐るるに足らず”と思わせる元凶になっている。
※週刊ポスト2014年10月3日号