国内

朝日「吉田調書報道」真っ先に疑った作家が改めて報道を検証

 5月20日、朝日新聞の「吉田調書」報道が世に放たれるや、真っ先に疑問を呈したのがノンフィクション作家・門田隆将氏であった。朝日の記事では、福島第一原発の作業員が命令に背いて現場から逃げ出したと「スクープ」したのだった。結局9月11日に朝日新聞社はこの件について謝罪、記事を撤回した。この報道の問題点を門田氏が改めて検証する。

 * * *
「朝日の報道を見て、なんだこれ? と思いました。腹が立ちましたよ。書いているのが朝日だから、と思うしかありませんでした」

 これは、2011年3月15日朝、所員の9割が福島第二原発(2F)に退避した中、福島第一原発(1F)の免震重要棟の緊急時対策室に残った“フクシマ・フィフティ”の一人(50)の言葉だ。

 衝撃音と共に2号機のサプチャン(圧力抑制室)の圧力がゼロになり、放射性物質大量放出の危機に陥った時、吉田昌郎所長は、「各班は、最少人数を残して退避!」と叫び、あらかじめ決めてあった手順に沿って約650人の所員が2Fへと退避した。その時に緊対室に残ったのが、計69人。これが外紙に“フクシマ・フィフティ“と称され、その勇気が讃えられた人たちである。しかし、彼ら事故と闘った人々を傷つけ、貶めたのが朝日新聞だった。

 同紙が、政府事故調による「吉田調書(聴取結果書)」を入手したとして、この時、2Fに退避した人々を「所長命令に違反して撤退した」と大キャンペーンを始めたのは、今年5月20日のことだ。

 1面トップで〈所長命令に違反 原発撤退〉〈福島第一 所員の9割〉と報じ、2面にも〈葬られた命令違反〉という特大の活字が躍った。

 冒頭のフクシマ・フィフティの一人は、こう明かす。
 
「あの時、実際の退避があった時からどのくらい前だったかわかりませんが、内々に2Fに退避させる人間を“選別しろ”という指示がありました。私は、自分の班では3人だけが残って、あとは2Fに行ってくれ、と部下に指示しました。しかし、“自分も残ります”と言って、譲らないやつがいました」

 だが、「2Fへの退避」は、あくまで上からの指示である。

「どうしても残る、と言い張ってきかない連中のことを思い出すと、今でも涙が出そうになります。でも、それを振り切って、”もし俺に何かあったら、お前が来て、ここでやんなきゃいけないんだぞ”と言って、やっと退避させました。その部下たちが、朝日によって、所長命令に違反して2Fに“逃げた人間”とされてしまいました。彼らに申し訳ないという思いと、記事に対しては言いようのない怒りを覚えました」

 命をかけて作業にあたることそれは、簡単なことではない。彼ら1Fの現場では、多くの無名の作業員たちが自らの命をかけて事故に立ち向かっていた。

関連記事

トピックス

2013年に音楽ユニット「girl next door」の千紗と結婚した結婚した北島康介
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志と浜田雅功
《松本人志が11月復帰へ》「ダウンタウンチャンネル(仮称)」配信日が決定 “今春スタート予定”が大幅に遅れた事情
NEWSポストセブン
夏レジャーを普通に楽しんでほしいのが地域住民の願い(イメージ)
《各地の海辺が”行為”のための出会いの場に》近隣住民「男性同士で雑木林を分け行って…」 「本当に困ってんの、こっちは」ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現
NEWSポストセブン
“新庄采配”には戦略的な狙いがあるという
【実は頭脳派だった】日本ハム・新庄監督、日本球界の常識を覆す“完投主義”の戦略的な狙い 休ませながらの起用で今季は長期離脱者ゼロの実績も
週刊ポスト
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《北島康介に不倫報道》元ガルネク・千紗、直近は「マスク姿で元気がなさそう…」スイミングスクールの保護者が目撃
NEWSポストセブン
娘たちとの関係に悩まれる紀子さま(2025年6月、東京・港区。撮影/JMPA)
《眞子さんは出席拒否の見込み》紀子さま、悠仁さま成年式を控えて深まる憂慮 寄り添い合う雅子さまと愛子さまの姿に“焦り”が募る状況、“30度”への違和感指摘する声も
女性セブン
電撃結婚を発表したカズレーザー(左)と二階堂ふみ
「以前と比べて体重が減少…」電撃結婚のカズレーザー、「野菜嫌い」公言の偏食ぶりに変化 「ペスカタリアン」二階堂ふみの影響で健康的な食生活に様変わりか
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
「ローションに溶かして…」レーサム元会長が法廷で語った“薬物漬けパーティー”のきっかけ「ホテルに呼んだ女性に勧められた」【懲役2年、執行猶予4年】
NEWSポストセブン
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
「なぜ熊を殺した」「行くのが間違い」役場に抗議100件…地元猟友会は「人を襲うのは稀」も対策を求める《羅臼岳ヒグマ死亡事故》
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《北島康介に不倫報道》元ガルネク・千紗「アラフォーでも美ボディ」スタートさせていた“第2の人生”…最中で起きた波紋
NEWSポストセブン
駒大苫小牧との決勝再試合で力投する早稲田実業の斎藤佑樹投手(2006年/時事通信フォト)
【甲子園・完投エース列伝】早実・斎藤佑樹「甲子園最多記録948球」直後に語った「不思議とそれだけの球数を投げた疲労感はない」、集中力の源は伝統校ならではの校風か
週刊ポスト
音楽業界の頂点に君臨し続けるマドンナ(Instagramより)
〈やっと60代に見えたよ〉マドンナ(67)の“驚愕の激変”にファンが思わず安堵… 賛否を呼んだ“還暦越えの透け透けドレス”からの変化
NEWSポストセブン