複座型ステルス戦闘機J-20。米国のF-35に対抗するために開発された第5世代ステルス戦闘機(写真=Xinhua/ABACA/共同通信イメージズ)
高市早苗首相の「存立危機事態」発言を受け、日中関係に緊張が高まっている。米政府当局は2023年以降、習近平国家主席が中国人民解放軍に対し、「2027年までに台湾侵攻の準備を整えよ」と命じているとの見方をたびたび示してきた。実際に中国軍の兵器は近年、高性能化が進み、台湾侵攻や海上封鎖を想定した軍事演習を重ねている。
台湾や米軍、そして日本に危機をもたらすのはいかなる兵器か。軍事フォトジャーナリストの菊池雅之氏がまず警鐘を鳴らすのは、台湾本土や周辺の海峡を狙うミサイル兵器だ。
「台湾本土や台湾海峡への攻撃には短距離弾道ミサイルDF-15(射程50~600km)、バシー海峡(台湾とフィリピンの間)沿岸部への攻撃や、進出する米軍艦隊への牽制には中距離弾道ミサイルDF-17(射程1800~2500km)が使用されると考えられます。とくに後者のDF-17は、迎撃の難しい極超音速滑空体(HGV)を弾頭として搭載できる点が脅威となります」(以下、「」内は菊池氏)
直近の演習で注目を集めたのが、今年11月に就役した003型空母・福建だ。中国3隻目となる空母で、同月18日に複数の艦艇を伴って初訓練を行なった。
「搭載する航空機を加速して発進させる電磁カタパルトという装置を世界で初めて実用化した空母です。訓練では、今年9月の『抗日戦争勝利80周年記念軍事パレード』で初公開されたばかりの艦上ステルス戦闘機J-35や早期警戒機KJ-600(空警600)が発射される様子も確認されました。これらは中国軍の主力である艦上戦闘機J-15Bに加えて福建に搭載される予定で、従来機より性能が向上しているとみられます。
空母を守る駆逐艦、フリゲート艦などの打撃群を台湾海峡やバシー海峡に展開し、艦上戦闘機、早期警戒機、さらには空軍の主力である複座型ステルス戦闘機J-20も出撃することで航空優勢(攻撃を受けずに作戦遂行できる状態)を確保するのではないかと考えられます」
