日本は世界一の温泉大国であると同時に、世界随一の老舗大国である。老舗旅館の中には創業1000年を超えるものも少なくない。その中のひとつが、粟津温泉の「法師」(石川県小松市)だ。
粟津温泉の開湯と同時に、奈良時代の僧・泰澄の命によって湯治場として718年に開業。風呂は2つの露天風呂付き大浴場があり、食事はすべて部屋出し。館内4つの建物には76の客室があり、手入れの行き届いた日本庭園には皇族が植えた木々などもある。
「新しいことに挑戦しつつも、“人々の癒しのために粟津の湯を守る”という原点は揺るがない。法師を名乗るからには、時に個人の幸せを堪えてでも宿を守り抜く。そして、大切な温泉を絶やさぬよう“欲をかかない”も宿を守る大切な信条です」(第46代目・法師善五郎当主)
明治時代には温泉街で火事が発生。玄関の前に立つ樹齢約400年の大木「黄門杉」の前で火の手は止まった。そして、宿はもうすぐ1300年目を迎える。
秋は11月に解禁されるカニ料理が目玉。30代の料理長が趣向を凝らす、活ガニをはじめとした懐石を堪能できる。
◆ナビゲーター:市川円香/1983年生まれ。11月11~16日まで舞台『Hello! Good Bye!』(中野ザ・ポケット)に出演など、女優、タレントして活動する。
撮影■小倉雄一郎
※週刊ポスト2014年11月14日号