ビジネス

トヨタの水素燃料電池車「MIRAI」に700万円の価値はあるか

トヨタの燃料電池車「MIRAI」

 トヨタ自動車が11月18日に発表した水素燃料電池車「MIRAI(未来)」(車両本体価格は税込み723万6000円)は、究極の次世代エコカーとして普及が期待されているが、肝心の“乗り心地”は従来カーに比べてどうなのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が試乗レポートする。

 * * *
「MIRAI」はボディの下部に小型化した燃料電池スタックを平置き。さらに水素燃料タンクを2本に分けて搭載するなど、さまざまな工夫を凝らしたことで、SUVではなく4ドアセダンスタイルを実現した。

 そのMIRAIをクローズドコースでテストドライブする機会があったので、ファーストインプレッションをお届けしたい。

 試乗会場は伊豆・修善寺のサイクルスポーツセンター。普段は自転車競技が行われる全長約5kmのワインディングロードで、結構な高低差のある走り甲斐のあるコースだ。

 野外に置かれたMIRAIのたたずまいは、開発責任者である田中義和氏の「まずは皆様に親しみを持っていただけるスタイリングを目指した」との言葉どおり、ハイブリッドカーの存在感を一気に高めた2代目「プリウス」のエアロダイナミクスボディの系譜に連なるもの。

 過度な斬新さを盛り込むのではなく、見慣れたスタイリングとすることで、道路交通に溶け込ませようという意図がうかがえた。インテリアもきわめて大人しいデザインを採用する一方、ドアトリムやダッシュボードのフィニッシャーに柔らかな手触りの合成皮革を用いるなど、乗る人に親和性を感じさせることを最優先した設計だ。

 MIRAIに乗り込み、メインスイッチをONにする。すでに燃料電池スタックの温度は十分に上がった状態であったため、アイドル時はほぼ無音。スロットルを踏み込むと、水素を送り出すポンプ、燃料電池スタック内に空気を回すブロワ、モーターを制御するインバーターなど複数の装置の音が重なり合い、「キュイイーン」というノイズを立てて発進する。

 過去のトヨタの燃料電池車があくまで無音に近づけることを目指していたのに対して、MIRAIはシステムノイズを走りを実感させるのに積極利用しているというイメージだ。

 MIRAIのドライブで最もインパクトが強かったのは、乗り心地の良さだった。燃料電池スタックや水素タンクなどの重量物をボディの下側に集中搭載したことにより、重心は普通のクルマよりはるかに低くなったという。

 重心の低いクルマは固いサスペンションに頼らずとも、操縦性の良さを確保できる。MIRAIのサスペンションも大型セダンとしてはかなり柔らかい部類に属しており、コース上の比較的大きなギャップを乗り越えても室内は至ってフラットな乗り心地が維持され、静粛性もきわめて高いレベルにあった。快適性ではトヨタのフラッグシップモデル「レクサスLS」と同じかそれ以上と感じられた。

 ハンドリングも良好。低重心や前後の重量バランスの良さの恩恵に加え、車両安定装置のチューニングがばっちり決まっていることが奏功して、本降りの雨でヘビーウェットだった試乗路においても安心してハイスピードを保つことができた。

関連記事

トピックス

“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン