コレクション完結時には再び記念イベントが開催される予定


 トークショーでは、作家として駆け出しのころの秘話がいくつも披露された。作品の結末を変えてくれと言われて閉口したことや、ボツにされて川に投げ捨てたとしていた原稿が発見され、読み返したら3人称と1人称がごちゃまぜで自分でもひどいと思ったこと。とにかく出版に間に合わせるため、弟の原稿を自分の名義で発表したこともあったが、当時は「そういう時代だった」と50年も前の出来事が昨日のことのように語られた。

 この日のトークショー参加者が満足したのは筒井氏のトークだけではない。『SF教室』が収録されたコレクション1巻をひと足早く手にできたことで、多幸感に包まれたはずだと会場で販売された著作3種類すべてを購入した40代男性は言う。

「僕自身がSFを読むきっかけになったのが、中学校の図書館にあった『SF教室』でした。人気作家の筒井康隆と豊田有恒に、翻訳家の伊藤典夫という豪華な執筆陣による秀逸な入門書です。子ども向けの本でありながら、古典的なSFから当時の最先端作品まで、小説だけでなくマンガや映画も含めて解説した素晴らしい本でした。1970年代にSFに目覚めた人にとっては、聖書のような存在です。

 大人が読んでも楽しめる本なので人気が高いのですが、長らく絶版だったため古書店やオークションでは数万円もしていました。手元に置いて読み返したいと思っても、価格の高さと数の少なさに諦めていた人も多いはずです。イラストも含めてほぼオリジナルのまま収録した今回のコレクション1巻によって、長年の夢が叶いました」

「筒井康隆コレクション」は全7巻の刊行が予定されている。次々と復刻される過去の作品によって、あらためて作家の創造力と先見性に感嘆し、中高年はみずからの幼年期を重ね、若者は新しい喜びを発見するだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト