中高年になって初めて料理に挑戦する男性は多い。“今さら料理なんて”と思うなかれ。それなりに美味い料理を口にしてきた経験があるからこそ、食には皆「こだわり」があるはずだ。シニア男性だからこその「料理の心構え」と「おすすめメニュー」を紹介しよう。
わが家の台所には調理器具や調味料がすでに揃っている。初期投資ゼロで始められることは他の趣味に比べて大きなアドバンテージとなる。
だがそこに落とし穴があると語るのは、『メンズ・キッチンスタイル』代表で男子料理研究家の福本陽子氏である。
「台所は奥様の“城”ですから、いきなりご主人がずかずか入ってもどこに何があるかさえわからない。そこで“包丁はどこだ”“粒コショウがないぞ”などと奥様をまるでアシスタントのように扱ってしまい、喧嘩になったという話をよく聞きます。最初は奥様のサポートなしではできないということを認識しなければいけません」
その上で、中高年男性が料理を始める際の注意点は何か。
「年配男性が陥りがちなのは、天才料理人になった気分でニンジンやダイコンの皮を包丁で剥いてみたはいいものの、仕上がりの酷さに愕然とし、“俺は料理に向いていない”と落胆してしまうケース。
今や料理上手な人でもピーラー(皮剥き器)を使っているんです(笑い)。画期的な調理器具が数多く登場しているので、便利に活用して、まずは楽しさを知ることが重要です」
最初に作るメニューにも注意したい。福本氏がすすめるのは「ハンバーグ」と「カレー」だ。“そんな子供料理なんて”と思ってはいけない。この2つは、シニア男性の料理事始めに最適なメニューなのだという。
「ハンバーグは、野菜を切る、肉をこねる、焼き上げるという料理の基本となるプロセスを簡単に学べます。
そしてカレーは失敗のリスクが少ない割に食べる人を驚かせることができるメニューです。市販のルーではなく、スパイスから調合して自分だけのオリジナルカレーを作りましょう。
難しそうに思うかもしれませんが、フードプロセッサーを使えば、意外と簡単です。それでいてどんな調合でもそれなりの味になる。辛さにさえ気を遣えば、小さなお子さんにも喜ばれます。また煮込むという作業は、手際の良さが問われないので余裕を持って臨めます」
「男の料理」と思われがちな炒飯は避けたほうがいい。
「炒め物や卵を使った料理は想像以上に難しい。火にかける時間が少し長いだけで卵がすぐ固くなってしまうように、手際が勝負なんです。できあがったものも“こんなはずじゃない”となりがちです。慣れてからにしたほうがいいでしょう」
イラスト◆スズキサトル
※週刊ポスト2014年12月5日号