Aさんの主張では、6月に体調を崩していた中、教官室で「腕立て伏せ3000回」を命じられたという。
「270回あたりでめまいを起こしてダウンすると、教官は『アピールはいらんのじゃ、お前はいつも口だけじゃ』と憤っていました。8月に入ってからは学生指導員(先輩生徒)から暴行も受けました」(Aさん)
一方の県側は「教官は辞職を勧めたが、強要した事実はない」と主張し、暴行も否定。Aさんに適性が欠けていたとして、請求棄却を求めている。
両者の言い分は食い違うが、興味深いのは証拠資料として裁判所に提出された在籍期間中のAさんの「日誌」である。警察学校の課題の一つで、教官が毎日赤ペンでコメントを書き込む。その記述を見ると、少なくともある時期には警察官として教育することより「退職させること」が目的化していたと読める部分が多くある。
たとえば4月24日、Aさんが〈最近、「絶対に俺は辞めさせられる」とばかり考えて周りが見えていない時がいっぱいあった。(中略)しかしここで気合を入れて自分の根性を見せたい〉と書くと、その後には教官が〈エゴのかたまりや〉と大きな赤字で書き込んでいる。仕事を続けようとするAさんの意気込みを〈エゴ〉と断じているのだ。
Aさんが検定(試験)で不合格になったことへの反省を書いた時には〈不合格〉が赤ペンで囲まれ、〈早く楽になれ。もう充分やろ?〉と書き込まれている(4月26日)。その後も、〈自分勝手や〉〈何もしなくていい〉〈今さら遅い〉〈今さら無理〉〈頑張り不要〉〈全く心がダメ、人として、男として〉などと、「教官」「警察官」「公務員」「社会人」のどれだとしても明らかに不適切な言葉が並ぶ。
●レポート/佐々木奎一(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2014年12月12日号